小麦粉色相評価のためのスキャナ式胚乳測色システム
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要約
市販のフラットベッドスキャナを利用し、小麦種子横断面の胚乳色相を測定するシステムを新規開発した。これにより製粉による小麦粉色相の劣化要因を除外し胚乳自体の色相を効率的に測定できるとともに、小麦粉色相の簡易評価が可能である。
- キーワード:スキャナ式胚乳測色システム、胚乳色相、コムギ
- 担当:東北農研・パン用小麦研究東北サブチーム、めん用小麦研究東北サブチーム
- 連絡先:電話019-643-3512
- 区分:東北農業・作物(冬作物)、作物
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
小麦粉の色相は、胚乳自体の色相とフスマの切れ込み等二次的要因から構成され、両者を区別して評価することが小麦粉色相の改良に
重要である。二次的要因を除外するため、種子横断面を測色することで胚乳色相を測定する手法はこれまでも存在したが、作業が非効率であったり、機器が現在
販売されていないなどの理由から、大量のサンプルを扱う育種に適用できる手法はなかった。そこで市販のフラットベッドスキャナを利用して安価な測色装置を
新規開発し、あわせて既存の色相解析ソフトウエアを省力的に改良することにより、小麦種子横断面における効率的なスキャナ式胚乳測色システムを新規開発す
るととともに、胚乳色相と小麦粉色相の関連性を検証した。
成果の内容・特徴
- 小麦種子を専用フォルダに接着し種子切断装置(千穂田精衡(株))で切断する。種子切断面を蒸留水を浸した濾紙上に置き
20℃で吸水させた後、新規開発した市販のフラットベッドスキャナ製の測色装置(スキャナ読み取り部にフォルダを固定する治具を設置した特注品)で切断面
を200dpiでスキャンしBMPファイル化する(図1)。
- 色相解析ソフトウエア(ピクセル解析、千穂田精衡(株))では、24色カラーチャートによるキャリブレーションをおこない、BMPファイルを読み込みL*,a*,b*に変換する(図1)。L*値で閾値を手動設定し胚乳部のみを抽出後、測色指定範囲の胚乳部の全L*,a*,b*ピクセルデータを単純平均してL*,a*,b*を算出する(図2)。10粒もしくは20粒単位での測色範囲の自動指定と自動測定、L*,a*,b*平均値および全ピクセルデータのCSV形式での自動保存が可能であり、小麦種子横断面における胚乳色相を効率的に測定できる。
- 吸水時間により胚乳色相は変動し、軟質と硬質で異なる挙動を示す(図3)。
- スキャナ式胚乳色相はブラベンダー製粉A粉の蒸留水ペースト色相と相関があることから、小麦粉色相の簡易評価法として利用できる(図4)。
成果の活用面・留意点
- 小麦粉色相測定と併行し胚乳色相測定をおこなうことで色相評価の高度化が図れる。
- 製粉が困難な個体レベルでの色相評価が可能となる。
- 測定は1日あたり200フォルダ程度可能である。
- 専用のフォルダを製作すれば大麦、ソバ等でも本システムを用いて胚乳色相の測定が可能であるが、測定条件は別途検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:めん用小麦品種の育成と品質安定化技術の開発
- 課題ID:311-b
- 予算区分:交付金プロ(新需要麦)
- 研究期間:2006~2007年度
- 研究担当者:前島秀和、石川吾郎、鈴木雅博、伊藤裕之、平将人、中村俊樹、谷口義則