可搬型気象ロボットの利用でメッシュ気象値の良精度推定地域を拡大できる

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要約

数台の気象ロボットから成る農業気象観測網を利用して未観測値の気象値を面的に推定(メッシュ気象値)する場合、可搬型気象ロボットによる観測データを併用すると、メッシュ気象値推定式の地形適用範囲を拡大でき、良い推定精度の面積が拡大する。

  • キーワード:メッシュ気象値、気象ロボット(自動気象観測装置)
  • 担当:東北農研・寒冷地温暖化研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3462
  • 区分:東北農業・基盤技術(農業気象)、共通基盤・農業気象
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

病虫害発生予察等の生産管理支援情報を個々の圃場に対して提供するには、正確な気象値の推定が必要である。気象条件は地域の地形に大きく影響され、同じ市町村内の圃場であっても、大きな気温差がある場合は珍しくない。そのため、多くの自治体は、数台の気象ロボットから成る農業気象観測網による観測を行っている。さらに、その累年観測データから、地形因子と気象値を関係づける重回帰式を求めると、未観測地の気象値の面的な推定(メッシュ気象値推定)が可能である。ところが、これら気象ロボットは、対象地域の地形範囲全体をカバーするように配置されていない場合が多い(例えば気象ロボット配置範囲より標高の高い圃場が多く存在するなど)。この場合、気象ロボットの配置される地形範囲外の地点では、気象値の推定は外挿となるため精度が劣化する。そこで、可搬型気象ロボットを利用して、地形範囲外の地点における臨時的な観測を行い、重回帰式の地形適用範囲を拡大し、メッシュ気象値推定精度を向上する方法を考案する。

成果の内容・特徴

下記の手順により、地形因子とメッシュ気象値を関係づける重回帰式を求める。

  • 農業気象観測網を構成する気象ロボット(固定ロボット)の設置される地形条件の範囲外の地点に、可搬型気象ロボットを設置し(臨時ロボット)、1シーズン(メッシュ気象値の推定が必要な期間)観測する。
  • 固定ロボット観測値と臨時ロボット観測値を関係づける回帰式を求める。
  • 臨時ロボット地点の累年データを、固定ロボット観測値から上記回帰式により推定する(固定ロボットの観測年数と同じ年数分推定する)。
  • 固定ロボットの累年データ(実測)と臨時ロボットの累年データ(上記推定値)を込みにして、地形因子とメッシュ気象値を関係づける重回帰式を作成する。以上の方法で求めた重回帰式を、既存のメッシュ推定方法(成果の活用・留意点の2参照)の中で使用すると、メッシュ値の推定精度が向上する。本方法によるメッシュ値の推定精度の向上例を図1に、本方法を用いた意志決定支援情報システムの運用事例を図2に示す。

成果の活用面・留意点

  • 標高等、地形条件が固定ロボット観測点と異なる場所での観測の場合に、顕著な精度向上が期待できる。本来ならばそのような場所に固定ロボットが設置されるのが良いが、それが実現できない場合に本手法が有効である。
  • 本方法により求めた重回帰式を用いてメッシュ値を推定するためには、本成果情報の発表論文等に記載される「ランク別法」が適している。
  • 本手法は特許出願中である。

具体的データ

図-1.メッシュ推定式の精度比較(日平均気温)(a)臨時ロボットなし、(b)臨時ロボットあり

図2.病害発生予察情報の例

その他

  • 研究課題名:寒冷地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
  • 課題ID:215-a.2
  • 予算区分:基盤、委託プロ(加工(2006))
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者名:鮫島良次、横山慎司(アグリウエザー社)、濱嵜孝弘(北海道農研)、廣田知良(北海道農研)
  • 発表論文等:1)Sameshima et al. (2008), JARQ,42,41-48.