硫安を用いた飼料イネ栽培向けの簡易な流入施肥方法

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要約

3重にしたコンバイン収穫用籾袋に硫安を入れて水口に置き、袋の底部のみを用水に浸けて入水する方法により、液肥のように一定濃度で肥料を供給する流入施肥ができる。多量の用水を必要とせず均一な追肥ができ、地耐力維持のために浅水で管理したい飼料イネ栽培に適する。

  • キーワード:飼料イネ、流入施肥、追肥、硫安、コンバイン収穫用籾袋
  • 担当:東北農研・東北飼料イネ研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3411
  • 区分:東北農業・基盤技術(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

流入施肥は水稲の追肥作業の省力化に有効であり、食用米向けに拡散性の高い顆粒状肥料や液肥の流入施肥器等が開発されている。一方、飼料イネでは、コスト低減のため専用肥料や専用器材を使わず、硫安等の安価な単肥を簡易な方法で施用することが望ましい。また、飼料イネでは、地耐力を維持するために浅水で管理する必要があり、液肥のように一定濃度で肥料を供給することで多量の用水を必要とすることを避けたい。これらの条件をふまえて、飼料イネ栽培に適した簡易な流入施肥法の開発をねらいとした。

成果の内容・特徴

  • コンバイン収穫用籾袋(ポリプロピレン製、標準容量30kg。以下、籾袋)を利用した流入施肥の方法を図1に示す。この手法は、籾袋を3重にし、袋の底部のみを用水に浸けることにより一定速度で硫安を溶解させる。また、水口と籾袋を置くコンテナの周りを波板で囲み、さらに幅30cm、2m程度の流路を作ることで、溶解した硫安と用水を混合させる。
  • この方法により、入水開始から入水終了まで硫安の溶解が持続し、流入施肥器を用いて液肥を施肥したように、入水開始から入水終了まで濃度変動の少ない肥料供給ができる(図2)。
  • コンテナの水深を変えることにより硫安の溶解速度が調整でき、コンテナの水深を深くすると硫安が早く溶けて用水中の硫安濃度が高くなる(図3)。なお、籾袋内に硫安の残量に対応した目盛り線を書いておくと、溶解速度を把握しやすい。
  • この手法で圃場を落水状態にしてから施肥を行うことにより、圃場内の施肥ムラの少ない追肥ができる(図4)。溶解速度を上げれば、入水後の水深5cm程度でも均一な施肥が可能である。

成果の活用面・留意点

  • この方法により、肥料を溶かして液肥を作る手間を省きながら、液肥の流入施肥に準ずる精度で飼料イネの窒素追肥を行うことができる。
  • 圃場内の高低差が大きいと施肥ムラが大きくなるので、均平に努める必要がある。また、流入施肥の途中で用水量が変動すると濃度も変動して施肥ムラの原因となるため、注意が必要である。
  • 硫安の残量が2kg程度まで減少すると溶解速度が遅くなるため、内側から袋を取り出して洗い流す操作が必要である。この操作により、施肥直後に水口近くの硫安濃度が高くなる場合がある(図4)。 このため、実際の圃場作業では、硫安が溶け残った状態で早めに追肥を終え、次の圃場に装置を移して肥料を補充し、連続して追肥作業を行うようにすると能率的である。

具体的データ

図1.コンバイン収穫用籾袋を用いた施肥法

図2.各種流入施肥方法における取水口のEC(電気伝導度)の推移

図3.コンテナの水深による硫安の溶解の差

図4.粒状硫安の水口流入施肥直後の田面水の窒素濃度の分布

その他

  • 研究課題名:東北地域における水田高度利用による飼料用稲生産と耕畜連携による資源循環型地域営農システムの確立
  • 課題ID:212-b.1
  • 予算区分:委託プロ(えさ)
  • 研究期間:2006~2008
  • 研究担当者:関矢博幸、西田瑞彦、土屋一成、大谷隆二、山口弘道、橘 雅明、中島敏彦
  • 発表論文等:関矢博幸ら(2008)、東北農業研究61