共販主体産地におけるリンゴ作共同防除組織の再編方向

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要約

リンゴ作共同防除組織は農民層分化とSS導入を契機に全戸出役型から受委託型に転換したが、オペレータ確保や経済性の点で組織としての自立性が低い。共同防除組織の維持・発展のためには、共販戦略への統合により収益性を高めることが再編方向になる。

  • キーワード:リンゴ作、共同防除組織、再編方策
  • 担当:東北農研・東北地域活性化研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3492
  • 区分:東北農業・基盤技術(経営)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

リンゴ作の生産力向上と主産地形成に大きな役割を果たしてきた共同防除組織は、1990年代以降、組織数、参加農家ともに、青森県では急減している。共同防除組織は、小規模農家を下支えするとともに、地域の農薬管理の要である。また産地の販売戦略の点でも産地規模や有袋栽培の維持には小規模農家が不可欠であり(平成19年度成果情報)、産地主体である農協共販組織では、その再編が大きな課題になっている。そこで、津軽地域における共販主体産地で、共同防除先進地である黒石市浅瀬石地区において、地域防除をカバーする属地型共同防除組織を対象に、リンゴ農家の組織加入行動や共同防除組織の運営状況を分析し、その再編方向を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • リンゴ農家は作付規模が2ha以上の大規模層、1~2haの中規模層、1ha未満の小規模層に区分でき、大規模層は共同防除組織へ加入し、オペレータとして出役する農家が多いのに対し、小規模層は組織へ加入しているが、もっぱら防除作業を委託している(表1)。元々、全戸出役型であった共同防除組織が現在のような受委託型へ転換するにはSS(スピードスプレーヤー)の導入が技術的な基盤になっている。一方、中規模層は組織へ加入してオペレータとして出役する農家と組織には加入せず、個人あるいは数戸共同で防除する農家に分かれる。
  • 中規模農家が組織に加入しない理由はコスト高と出役負担にあり、こうしたオペレータ層の離脱は受委託型組織の運営基盤の不安定要因になっている。他方、大規模農家では、こうした理由以上に中小農家を含めた産地としての維持に組織の意義を見いだしている(表2)。
  • 共同防除組織(A組合)の経営収支を受委託型化の前後で比較すると、収入では農協奨励金(農薬の販売奨励金)が増加し、支出では機械費や労働費などSSの導入やオペレータにかかる費用が増加している(表3)。農家経済が悪化しているため、オペレータ賃金を農家負担金に求めることができず、全戸がオペレータ出役している属人型組織(B組合)と比較すると、農協奨励金への依存が高くなり、組織としての自立性が低下している。
  • 以上のように共同防除組織は、すでに農協より資金を受けている。これを維持・発展につなげるには、共同防除体制が確立しているゆえの効果である、地域的な農薬の適正管理や減農薬栽培の取り組みなどを共販戦略に活用し、その成果を組織に還元することが必要である。そのためには、共同防除組織を共販の販売戦略のもとに位置づけることが再編方向になる。

成果の活用面・留意点

  • 貯蔵リンゴ生産の担い手として小規模農家が重要な遠隔リンゴ産地におけるリンゴ作共同防除組織の再編方向を検討する際に利用できる。
  • 産地市場に出荷している産地においても、販売の論理に基づき、共同防除組織が支援されることが望まれる。

具体的データ

表1 共同防除組織加入状況

表2 共同防除組織の効果に対する農家意識

表3 費用および農協依存比率の共同防除組織間比較

その他

  • 研究課題名:東北農業の動向解析に基づく新たな担い手像の解明と地域食材を活かした産地戦略による地域活性化手法の開発
  • 課題ID:211-a.2
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:長谷川啓哉
  • 発表論文等:長谷川(2008)東北農業経済研究26(2):1-11