クッキングトマトの家庭内消費拡大のための販売方策

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

クッキングトマトの当面の販売ターゲットは、トマトを多様な調理で摂取している消費者であり、家庭内消費拡大に向けた販売方策として、ホールトマトと競合しにくく加熱調理適性をアピールしやすい「焼きもの」「炒めもの」のメニュー提案が重要である。

  • キーワード:家庭内消費、クッキングトマト、加熱調理適性、差別化、販売方策
  • 担当:東北農研・東北地域活性化研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3493
  • 区分:東北農業・基盤技術(経営)、共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

生食用トマトに比べ加熱調理適性に優れリコペンを多く含むクッキングトマト(加熱調理用トマト)は、消費者の健康志向を背景に消費拡大が期待されている。しかし、安価なホールトマト(トマト缶詰)等との競合に加え、我が国の一般家庭ではトマトの加熱調理に馴染みが薄いことから普及に支障をきたしており、消費拡大のためには、消費者の日常の調理行動や商品特性への関心をふまえた販売方策が重要になっている。そこで、トマト消費に関する消費者のアンケート結果に因子分析およびクラスター分析を適用して消費者を分類し、当面の普及対象となる消費者を特定するとともに、トマト食材をめぐる調理行動の特徴をふまえた消費拡大のための販売方策を提案する。

成果の内容・特徴

  • 消費者は、トマトを「多様な調理でほどほど摂取する」群(多様調理群:89名)、「健康食材として生でたっぷり摂取する」群(生果大量消費群:57名)、「摂取に無関心」な群(無関心群:47名)に分けられる。表1に示すように生食へのこだわりが少なくホールトマトの利用が多い等の特徴をもつ多様調理群をクッキングトマトの当面の普及対象とみなせる。
  • 生食用トマトは加熱調理に不向きであるが、多様調理群においては、それらの生果が加熱調理されている。ホールトマトは、湯むきされたトマトがジュース漬けになっているため、「煮もの・煮込み」「パスタ」など加熱後の水気が支障になりにくい料理での使用頻度が高い。これらの用途では生果とホールトマトとの競合が生じ易い(図1)。
  • 多様調理群の89%はクッキングトマトを購入する意向を示している(表1)。購入意向をもつ人のなかで、購入経験があり購入が継続している人は、加熱調理適性に魅力を感じ、比較的高価格帯での購入を受容する(図2)。
  • 以上から、多様調理群を対象にクッキングトマトの消費拡大を推進するうえでは、安価なホールトマトとの用途の差別化を図るため、ホールトマトと競合しにくく加熱調理適性をアピールしやすい「焼きもの」「炒めもの」のメニュー提案が重要な販売方策となる。

成果の活用面・留意点

  • アンケート調査は、電話帳から無作為抽出した仙台市内1300世帯に協力を打診しこれを承諾した259名に対して、郵送法により実施した(2008年6月実施、回収率84%)。分析は女性回答者193名のデータに基づく。回答者の年齢構成は、20~30歳代6.8%、40歳代14%、50歳代、60歳代各32.1%、70歳代以上15%である。
  • 小売業者等が、生食用トマトやホールトマトとの差別化を図りながらクッキングトマトを販売する際の知見として参考になる。

具体的データ

表1 トマト消費の違いからみた消費者群の特徴

図1 多様調理群におけるトマト(生果)およびホールトマトの用途

図2 多様調理群におけるクッキングトマトの商品としての魅力、購入(500g)の上限価格帯、過去の購入経験およびトマト加熱料理の頻度に関する多重コレスポンデンス分析結果

その他

  • 研究課題名:寒冷・積雪地域における露地野菜及び花きの安定生産技術の開発
  • 課題ID:211-i
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:佐藤百合香
  • 発表論文等:佐藤(2008)東北農業研究センター農業経営研究、25:53-62 佐藤(2008)東北農業研究、61:231-232