タイヌビエの抑草を目的とした飼料用稲湛水直播栽培の播種方式と目標苗立ち数

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要約

東北地域の湛水直播栽培においてタイヌビエの残草量を減少させるためには、散播方式を採用し、飼料用稲の目標苗立ち数を210本/m2程度とし、播種後の完全除草期間を32日間程度に設定すると良い。

  • キーワード:タイヌビエ、抑草、飼料用稲、加法モデル
  • 担当:東北農研・東北飼料イネ研究チーム
  • 代表連絡先:電話0187-66-2771
  • 区分:東北農業・作物(稲栽培)、共通基盤・雑草
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

東北地域において低コスト飼料用稲栽培体系を確立するために、除草剤の使用を最小限にした雑草管理技術の開発が求められている。飼料用稲の抑草力の利用は、除草剤処理回数の低減に有効と考えられる。しかし、播種方式や水稲の苗立ち数などの違いが雑草の残草量にどの程度の影響を与えるのかは明らかでない。そこで、飼料用稲湛水直播の栽培管理要因が強害雑草タイヌビエの残草量に及ぼす影響を加法モデルを用いて定量的に解析し、飼料用稲の抑草力を最大限に発揮しうる播種方式と苗立ち数を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 播種後完全除草期間、水稲苗立ち数、タイヌビエ埋土種子数の各平滑化スプライン関数と播種方式および品種を変数とした加法モデルで収穫期のタイヌビエの地上部乾物重(以下、残草量)を予測できる(図1、図2)。
  • 残草量に対する播種後完全除草期間の影響は変数の中で最も大きく、25日間前後で残草量は大きく変動する。水稲の苗立ち数が105本/m2から210本/m2まで増加するに従い残草量は減少するが、210本/m2以上ではあまり変動しない。タイヌビエの埋土種子数が増加するに従い残草量は増加するが、10000粒/m2以上ではあまり変動しない。播種方式では散播、品種では「べこあおば」を採用すると残草量は減少する(図1)。
  • 上記のモデルによる予測では、残草量は、播種後完全除草期間が24日間より28日間で68%、水稲苗立ち数が105本/m2よりも210本/m2で48%、タイヌビエの埋土種子数が5000粒/m2より500粒/m2で34%、条播より散播で26%、「べこごのみ」より「べこあおば」で25%減少する(図3)。
  • ブートストラップ法により残草量の90%予測限界における上限値を算出した。タイヌビエの埋土種子数を5000粒/m2とした場合、上限値が10g/m2以下となる播種後完全除草期間は、条播の苗立ち数105本/m2では38~40日間であるが、散播の苗立ち数210本/m2では1週間程度短く31~32日間である(図4)。以上から、飼料用稲の抑草力を最大限に発揮するには、散播方式を採用し、目標苗立ち数を210本/m2程度とすることが望ましく、その場合、目標とする完全除草期間は播種後32日間程度となる。

成果の活用面・留意点

  • 東北地域の飼料用稲湛水直播栽培において播種方式と播種量を設定する際の参考となる。
  • 本成果は、秋田県大仙市の東北農業研究センターの圃場で5月12日~5月13日に鉄コーティング種子を表面播種して湛水で管理し、10aあたり牛糞堆肥1tおよび化成肥料N成分14kg(追肥を含む)を施用した条件で得られた結果である。
  • べこごのみは密播で倒伏する場合があるので中干し等の栽培管理を適切に実施する必要がある。

具体的データ

図1  タイヌビエ残草量に加法モデルをあてはめた結果(偏残差プロット)

図2  タイヌビエ残草量の実測値と加法モデルで算出

図3  各種栽培条件がタイヌビエの残草量に及ぼす影響加法モデルにより残草量を予測し、上記の全ての組み合わせについて平均した。

図4 タイヌビエ残草量の90%予測限界における上限値が10g/m<sup>2</sup>以下となる完全除草期間タイヌビエの土中種子数が5000粒/m<sup>2</sup>の場合にブートストラップ法によって予測限界値を算出。

その他

  • 研究課題名:東北地域における水田高度利用による飼料用稲生産と耕畜連携による資源循環型地域営農システムの確立
  • 課題ID:212-b.1
  • 予算区分:基盤、委託プロ(えさ)
  • 研究期間:2005~2008年度
  • 研究担当者:橘 雅明、中山壮一