極大粒の水稲品種「べこあおば」は7年間平均で920kg/10aの超多収を記録

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要約

水稲品種「べこあおば」は、寒冷地の極多肥条件において、7年間平均で坪刈り粗玄米重920kg/10aの超多収を示す。多収要因としては、千粒重が極めて大きいためにシンク容量が大きいことが挙げられる。

  • キーワード:べこあおば、大粒、超多収、寒冷地、多肥、水稲
  • 担当:東北農研・東北水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話0187-66-2776
  • 区分:東北農業・作物(稲栽培)、作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、飼料用米や加工用米の超多収技術の開発の要望が高まっている。寒冷地は、温暖地と比較して、平年収量は高いが、過去の超多収研究において必ずしも安定して超多収を達成できなかった。これは、温暖地において超多収を示すインド型品種は低温に弱く、寒冷地における収量が低いためであった。このため、寒冷地においても安定して多収を示す品種の育成が求められていた。東北農業研究センターが育成した飼料用水稲品種「べこあおば」は、粗玄米収量においても多収が期待できる。そこで、「べこあおば」の多収性の実態とその要因について解析する。

成果の内容・特徴

  • 「べこあおば」は、極多肥条件下(窒素量16~18kg/10a)において、7年間平均で粗玄米重920kg/10aの超多収を示す(表1)。寒冷地における従来の日本型超多収品種「ふくひびき」や温暖地におけるインド型超多収品種「タカナリ」と比較して安定して大きい粗玄米重を示し、2003年、2004年のように作況指数が94の不作年でも約850kg/10aを得られる。
  • 「べこあおば」の多収要因としては、「ふくひびき」や「タカナリ」と比較して、総籾数は少ないものの、千粒重が極めて大きいためにシンク容量が大きいことが挙げられる(表2)。
  • 「べこあおば」は、シンク容量と粗玄米重の間に正の相関関係が認められる(図1)。
  • 「べこあおば」は「ふくひびき」と比較して、穂揃い期の葉面積、窒素吸収量に差異はないが、全乾物重と非構造性炭水化物量が大きい(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 本試験は、寒冷地の中でも気象条件に恵まれた日本海側の秋田県大仙市における灰色低地土の水田で行ったものである。気象条件や土壌条件が異なる地域における収量性については、別途検討する必要がある。
  • 飼料用米や加工用米の品種選定に活用できる。
  • 極大粒の水稲品種「秋田63号」も寒冷地における超多収を記録している。

具体的データ

表1.粗玄米重の年次変動.

表2.収量・収量構成要素の品種間差異.

図1 シンク容量と粗玄米重の関係.

表3.穂揃い期の生育特性の品種間差異.

その他

  • 研究課題名:東北地域における高生産性水田輪作システムの確立
  • 課題ID:221-k.3
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2008年度.
  • 研究担当者:福嶌陽、長田健二(近中四農研)、白土宏之、山口弘道、福田あかり、
                      吉永悟志(作物研)、寺島一男(中央農研)、持田秀之
  • 発表論文等:長田健二ら(2007)東北農研研報107:63-70.