ナタネ栽培圃場における花粉飛散による交雑率

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要約

異なるナタネ品種を隣接して栽培した圃場において、花粉源とした品種中の交雑率は11.6%であるが、花粉源から風下側に離れるにしたがって交雑率は減少し、隣接で4.1%、30m離れると0.1%、60mで0.01%となる。

  • キーワード:ナタネ、花粉飛散、組換え体、交雑
  • 担当:東北農研・寒冷地特産作物研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3655
  • 区分:東北農業・作物(冬作物)、作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、ナタネ(Brassica napus)の遺伝子組換え体がカナダなどで開発・栽培されるようになり、組換え体からの花粉飛散による非組換えナタネや近縁種への遺伝子拡散防止に関連して交雑程度が研究されている。現在、ナタネ組換え体の国内栽培はないが、国内におけるナタネの自然交雑率は品種育成上の必要である種子純度の維持のためにかつて研究された。しかし、栽培圃場間における交雑性や交雑距離に関する蓄積は十分ではない。そこで、遺伝子組換え体の栽培を想定して、花粉の飛散による交雑と距離の関係を検討する。

成果の内容・特徴

  • 試験圃場の花粉源区(品種:カミキタナタネ♂)を南側に設定すると、5月初め~末のナタネ開花期間中は南からの北への風の頻度が高いため、花粉源側から種子親(品種:キラリボシ♀)側へ吹く風の頻度が高かった(図1、2)。
  • 花粉源区中に配置したキラリボシの交雑率は11.6%(試験年別で9.4~19.0%)である(表1)。
  • 種子親であるキラリボシの交雑率は、隣接区(0.25m)で4.1%(試験年別で3.0~5.2%)であるが、花粉源から離れるにしたがって減少し、1m区で1.4%、5m区で0.4%、10m区で0.2%、30m区で0.09%となる。最遠の60m区ではわずか0.01%(約15000粒に1粒の交雑粒)である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 遺伝子組換えナタネからの遺伝子拡散防止、栽培基準策定などに関する基礎資料として利用する。
  • 花粉飛散による交雑率は花粉源の大きさ、栽培地の地形・気象条件、昆虫相、品種の開花期間などによって変動するので、外国で行われている試験事例(Beckieら2003年など)も参考にする必要がある。また、風媒より虫媒の影響が大きいとする示唆がある。
  • 国内試験の例(田坂 1943年)では、ナタネ畑(面積80a)から風下側に距離を変えてナタネを植えたポットを配置した場合、交雑率は1.8mで19.5% 、36m で7.5%、108m で4.3%であった。
  • 本試験に用いたキラリボシとカミキタナタネの開花期間はほぼ一致した。

具体的データ

図1 試験圃場図(面積約21a、東北農業研究センター・盛岡市)

図2 ナタネ開花期間中の風向の頻度(%)と風速(m/s)(4カ年平均)

表1 花粉源(カミキタナタネ)からの距離と交雑率(%)

その他

  • 研究課題名:寒冷地特産作物の優良品種の育成及び利用技術の開発
  • 課題ID:311-f.2
  • 予算区分:委託プロ(安全性確保)
  • 研究期間:2002~2008年度
  • 研究担当者:山守誠
  • 発表論文等:山守誠(2008)東北農業研究、60:59-60