若年男子の就農増加傾向とその地域差要因

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要約

2000年以降、販売農家における若年男子世帯員の就農傾向が強まっている。その傾向には地域差があり、九州などで強くみられ、その要因として地域の農業基盤と若年労働市場の双方が関与している。

  • キーワード:若年男子、就農増加、コーホート分析
  • 担当:東北農研・東北地域活性化研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3491
  • 区分:東北農業・基盤技術(経営)、共通基盤・経営
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

日本農業の担い手とあとつぎ問題に関して、これまでは高齢化と後継者不足が一貫した論調であった。しかし、とりわけ2000年以降、従来の議論とは異なり、若年男子の農業就業が強まる傾向が認められるようになってきた。このような若年男子の就農動向は、地域農業に固有の事情に加えて、近年の若年労働市場の状況によっても影響を受けていると想定することができる。そこで、若年男子の就農傾向が強まっていることおよびその地域差を確認するとともに、都府県を集計単位とするクロスセクション分析により、就農傾向の地域差要因を解明する。

成果の内容・特徴

  • 25~29歳の年齢階層では、2000年からの5年間に、販売農家の男子世帯員は全国で39,058人減少しているにも関わらず、男子基幹的農業従事者は1,530人増加している(表1)。また、基幹的農業従事者のうち、実際に年間150日以上自営農業に従事した農業専従者についてみても、25~29歳の年齢階層では実数として1,159人増加している。
  • 2000年時点での20~24歳販売農家男子世帯員は、5年間で30.7%減少しているが、そのコーホートの男子基幹的農業従事者は、全国で71.4%増加している(表2)。いわゆる「定年帰農」に相当する2000年時点での55~59歳コーホートの男子基幹的農業従事者が5年間で56.3%増加(ただし、世帯員は9.9%減)したことと比較しても、2000年時点での20~24歳階層の農業就業傾向は際立っている。
  • 2000年と2005年における20~24歳階層の販売農家男子世帯員に占める基幹的農業従事者の比率を都府県単位でみると、両年とも、都府県における地域差を確認することができ、主に九州において高い比率を、北陸3県などで低い比率を示している。また両者の間には高い相関(r=0.97)があり、地域の序列は2000年から2005年にかけて、硬直的である(図1)。
  • 若年男子の基幹的農業従事者比率を目的変数とする要因分析の結果、地域の農業の特性(販売農家1戸あたり農業産出額が大きな地域であること)および若年労働市場の特性(若年男子が地元で農外就業し難いこと)の双方が影響を及ぼしている(表3)。
  • 東北地域において近年若年男子基幹的農業従事者が顕著に増加した地域(青森県T市および福島県F市)での聞き取り調査から、若年就農が目立つ地域(旧村)の特性として、果樹などの労働集約的な作目を基幹とする傾向が認められた。

成果の活用面・留意点

  • 若年男子の就農増加傾向を初めて明らかにした成果であり、今後の担い手研究の分析枠組み構築において活用される。
  • F市の「男子新規就農者」は1996年~2000年の46人から2001年~2005年は78人に増加している。

具体的データ

表1 年齢階層別にみた販売農家男子労働力の推移(2000年→2005年)   (単位:人)

表2 コーホート別の販売農家男子基幹的従事者数の推移(2000年→2005年 2000年値=100)

表3 「販売農家の25~29歳男子世帯員に占める基幹的農業従事者比率」の差異をもたらしている要因に関する重回帰分析結果

図1 販売農家の20~24歳男子世帯員に占める基幹的農業従事者の比率 (都府県)

その他

  • 研究課題名:東北農業の動向解析に基づく新たな担い手像の解明と地域食材を活かした産地戦略による地域活性化手法の開発
  • 課題ID:211-a.2
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:堀川 彰
  • 発表論文等:堀川(2008)2008年度日本農業経済学会論文集p.107-112