出穂後の積算気温で穂いもち感染可能期間を予測できる

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要約

穂首いもちは、出穂後の日平均気温の積算気温50-300°C日の穂に、また籾・枝梗いもちは0-200°C日の穂に感染可能である。穂いもちの感染可能期間を出穂後の積算気温300°C日以内と見なすことで、イネ株内の感染可能期間と感染可能穂の割合を予測できる。

  • キーワード:穂いもち、積算気温、出穂後、穂首いもち
  • 担当:東北農研・やませ気象変動研究チーム、宮城県古川農試・作物保護部
  • 代表連絡先:電話019-643-3408
  • 区分:東北農業・基盤技術(病害虫)、共通基盤・病害虫
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

東北地方の冷害年では、障害不稔とともに穂いもちによる減収が大きな問題となっている。冷害年に穂いもちが多発する要因の一つとして、出穂後の低温による感染可能期間の長期化が考えられる。そこで、出穂後の気温と穂いもち感受性の関係を調査して、穂いもち感染可能期間の範囲について日平均気温の積算気温を用いて明らかにする。また、出穂後の気温からイネ株内の感染可能期間と感染可能穂割合を予測するモデルを作成する。

成果の内容・特徴

  • 止葉葉耳から穂の先端が出た日を各穂の出穂日とする。籾・枝梗いもちは出穂直後から感染可能となり、出穂後の積算気温が50-60°C日のときに最も感受性が高まり罹病籾割合が大きくなる(図1)。出穂後の積算気温が200-250°C日の穂で籾・枝梗いもちにほとんど感染しなくなる。
  • 冷害年に多発して収量に大きな影響を及ぼす穂首いもちは、出穂後の積算気温が50°C日から感染可能となる(図2)。出穂後の積算気温が130°C日で最も感染しやすくなり300°C日以降になると感染割合は小さくなる。
  • 出穂後の積算気温が0~300°C日の範囲を穂いもちの感染可能期間として、イネ株内における穂いもち感染可能穂割合の経時的モデルを作成した(図3)。出穂後の気温が高いときは出穂速度も速く株内の穂も早く出穂するため感染可能期間が短くなる。冷害時のように出穂後低温が続くときは出穂速度が遅く、また出穂もばらつくため感染可能期間が長期化して、穂いもち感染の危険性が高まる。出穂期間中の平均気温が18.7°Cのときは株内の感染可能穂割合が50%以上の日は18日間だが、26.8°Cのときは10日間である。

成果の活用面・留意点

  • 温度勾配実験施設を用いたポット試験の結果であるが、屋外ポット試験および圃場試験でも同様の結果を確認済み。
  • イネ品種ひとめぼれを用いた試験結果である。品種あきたこまちでも同様の試験結果であることを確認しているが、他の品種ではまだ確認していない。
  • 気温予測データを用いることにより、冷害年の穂いもちの要防除期間を予測や穂いもち茎葉散布剤の追加防除の判断基準として利用できる。

具体的データ

図1 出穂日からの積算気温と罹病籾割合(籾・枝梗いもち)の関係

図2 出穂日からの積算気温と穂首いもち割合の関係

図3 出穂後の気温と株内の感染可能穂割合の関係

その他

  • 研究課題名:やませ等気象変動による主要作物の生育予測・気象被害軽減技術の高度化と冷涼気候利用技術の開発
  • 課題ID:215-b
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2004-2008年度
  • 研究担当者:小林隆、笹原剛志(宮城県古川農試)、石黒潔、神田英司、兼松誠司、菅野洋光