汎用コンバインを活用した稲わらの迅速乾燥・収集体系

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

汎用コンバインのこぎ胴で圧砕された稲わらは、刈株上にウィンドローの状態で排出することで迅速に乾燥する。乾燥後は、クローラ装着ロールベーラとセミクローラトラクタを組み合わせた体系で地耐力の低い圃場においても高能率な梱包作業ができる。

  • キーワード:汎用コンバイン、圧砕稲わら、圃場乾燥、ロールベーラ
  • 担当:東北農研・東北水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3433
  • 区分:バイオマス、東北農業・基盤技術(作業技術)、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

稲わらの収集を困難にしている要因として、天候によっては乾燥が進まず、ニーズに応じた量・品質の確保が難しいことや、作業労力の不足がある。そこで、汎用コンバイン(スクリュー型脱穀機構)を利用して、こぎ胴を通って圧砕された稲わら(以後、圧砕稲わらという)による迅速乾燥技術を開発し、高能率に梱包・搬送する収集体系を開発する。

成果の内容・特徴

  • 汎用コンバインの稲わら排出部のカッタを取り外し、ウィンドローワ(試作部品)を装着することで、クローラ(間隔70cm)による踏圧を受けない刈株上に圧砕稲わらを排出できる。作業幅2mの汎用コンバインの場合、圧砕稲わらのウィンドロー幅は50cm、高さ27cm程度であり、ウィンドローの間隔は約1.5mである(図1-a)。
  • クローラ装着ロールベーラにセミクローラトラクタを組み合わせ、圧砕稲わらのウィンドローを拾上げ・梱包することで、土壌硬度(深さ0~15cm平均)が0.6MPa程度の地耐力の低い圃場にも適応可能な稲わら収集体系が構築できる(図1-b)。
  • 圧砕稲わらのウィンドローは、東北地域の慣行の立ちわら(4本立て)に比べ迅速に乾燥する。刈高さの影響は降雨があった場合に顕著となり、15cm程度の刈高さであれば降雨後も急速に乾燥する(図2-a)。
  • 稲の栽植様式の影響では、特に稲収穫直後に降雨がある場合、移植に対して条播の乾燥が速く、条播では条間が狭いほど迅速に乾燥する(図2-b)。これは、株植えの移植では、株間および条間に落下した稲わらが地表面に接しているが、条間15cmの条播では刈り株上に載っているためである。
  • 圧砕稲わらは、条間15cm、刈高さ15cmの場合、晴天の条件では2~3日で含水率60%から20%以下に迅速に乾燥する(図2-a,b)。
  • クローラ装着ロールベーラをセミクローラトラクタで牽引する体系の梱包作業能率は0.11h/10a、運搬距離が2kmの場合の荷積み・運搬を含むトータルの作業能率は0.22h/10a、燃料消費は1.79L/10aである(表1)。
  • 乾燥した圧砕稲わらのロールベールの梱包密度は、170kg・DM /m3程度で、通常の稲わらと同程度である。水分が高い状態では、圧砕の効果により25%程度乾物密度が上昇する(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 稲収穫後の天候が比較的不安定で稲わら収集が困難であった地域に適用できる。
  • 汎用コンバインには、国産K社製AX85(2007年)およびARH900(2008年)を用いた結果である。
  • ウィンドローワは、鉄板、チェーンなどで自作可能であり、傾斜角度は水平方向に対して40°以上の角度とする。

具体的データ

図1 汎用コンバインとクローラ装着ロールベーラによる稲わら収集体系

図2 圧砕稲わらの乾燥速度

表1 作業能率および資材消費

表2 ロールベールの乾物密度

その他

  • 研究課題名:稲わら・麦わらの低コスト収集技術の開発
  • 課題ID:224-a.5
  • 予算区分:基盤、委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:大谷隆二、澁谷幸憲、天羽弘一、西脇健太郎、押部明徳