北東北の中標高以上で利用できるフェストロリウム「イカロス」

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要約

「イカロス」は、北東北の中標高地など冬季の連続積雪日数120日以下の地域で、採草および放牧利用に向くフェストロリウム品種である。寒冷地での採草利用において「バーフェスト」に比べ9%多収で、採種性に優れる。

  • キーワード:フェストロリウム、適応性、採種性、飼料作物育種
  • 担当:東北農研・飼料作物育種研究東北サブチーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3563
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

フェストロリウムはライグラスと同様の高消化性に環境耐性を付与した多年生の新牧草で、東北地方の転作田や飼料畑などでの栽培に向く、高品質多収・耐湿性の「東北1号」を2009年品種登録申請した。東北1号は、既存品種に対して、寒冷地各地で多収で、積雪の少ない地域でその差が拡大する傾向にある。また、耐雪性・越冬性においては既存品種よりやや劣るので、北東北の中標高以上の草地での栽培は推奨していない。そのため、この地域に適応する越冬性品種の開発が求められている。

成果の内容・特徴

  • 「イカロス」の東北農研(盛岡市)における収量は、採草を想定した少回刈りの4カ年平均値で「バーフェスト」より9%多収、放牧を想定した多回刈りで4%多収で、いずれも「東北1号」と同等である(表1)。
  • 「イカロス」は北海道長沼町(連続積雪日数約120日)においても越冬に支障がなく、「バーフェスト」やペレニアルライグラス「フレンド」よりも越冬性は若干優れる(表2)。寒冷地で「東北1号」よりも雪腐病罹病程度が低く(表3)、冬期が寒冷多雪であった2006年も多収であったことからも、北東北での適応性は高い(表1)。
  • 温暖地(千葉)や暖地(宮崎)では、複数年にわたる利用は難しいが、越夏性は「バーフェスト」、「フレンド」よりも優れる(表2)。
  • 出穂始日は「バーフェスト」と同時期で、「東北1号」より若干早い。稈長・穂長が「東北1号」よりも短く、葉幅が小さく、茎数が多い(表3)。
  • 草型は「バーフェスト」と同様にややほふく型で、葉色は「バーフェスト」よりも淡く「東北1号」よりも濃い(表3)。
  • 冠さび病抵抗性は「バーフェスト」よりも優れるが、「東北1号」よりも若干劣る。葉腐病抵抗性は、「東北1号」同様に優れる。耐倒伏性は両品種と同程度である(表3)。
  • 乾物消失率は「バーフェスト」より高いが「東北1号」より低い(表3)。
  • 採種量は「バーフェスト」と同等で多収、「東北1号」よりも優れる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 冬季の連続積雪日数120日までの草地で、採草及び放牧利用に適する。北東北、南東北の太平洋側及び中高標高地域、関東東山の中高標高地などの畑、草地に向く。
  • 東北地域でも、夏期が高温となる日本海側や南東北の内陸部などでは、越夏は難しいと思われる。その他の地域でも、夏期の高温期の刈取りでは若干高刈りするなど、越夏に配慮した管理を心がけるようにする。
  • 本系統は雪印種苗(株)と共同研究によって育成したもので、種子は現在増殖中である。

具体的データ

表1 イカロスの収量性

表2 イカロスの各地における適応性

表3 イカロスの諸特性

その他

  • 研究課題名:粗飼料自給率向上のための高TDN収量のとうもろこし、牧草等の品種育成
  • 中課題整理番号:212c.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2000~2009年度
  • 研究担当者:上山泰史、米丸淳一、久保田明人、秋山征夫、立花正(雪印種苗)、谷津秀樹(雪印種苗)、小槙陽介(雪印種苗)、近藤聡(雪印種苗)