麦類をリビングマルチに用いる大豆栽培技術

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要約

麦類をリビングマルチに用いる大豆栽培の播種には、普通畑圃場では平畝型、転換畑圃場では畝立て型の麦類・大豆同時播種機を用いる。麦類の抑草効果は播種後50日頃で乾物重150g/m2以上確保した場合に認められ、沖積土では慣行並の収量を得られる。

  • キーワード:リビングマルチ、大豆、麦類、麦類・大豆同時播種機
  • 担当:東北農研・カバークロップ研究チーム
  • 代表連絡先:電話024-593-6186
  • 区分:東北農業・作物(夏畑作物)、共通基盤・雑草
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

除草剤の使用量の削減や省力化のための技術として、麦類をリビングマルチに用いる大豆栽培技術の開発が進められてきたが、播種作業技術の未確立、技術の適応範囲が明確でないことが技術普及の妨げとなっていた。このため、畑圃場、転換畑圃場にそれぞれ適応する平畝条播、畝立て条播のための麦類・大豆同時播種機を製作するとともに、東北地域の農家圃場への試験導入の結果などに基づいて適応範囲を示し、技術の安定化を図る。

成果の内容・特徴

  • 本技術は、大豆の播種と同時に、リビングマルチとして秋播き性麦類(大麦または小麦)を大豆の条間に播種することで作物群落の被蔭力を高めて雑草を抑制するものである。
  • 普通畑圃場では代かき専用ロータリ(代かきハロー)に、麦類用と大豆用の播種ユニットを取り付けた平畝用(図1(a))を用い、事前のロータリ耕の後、整地と同時に施肥・播種を行う。転換畑圃場では湿害回避の観点から、耕耘同時畝立て播種用逆転ロータリに野菜類用(麦類播種に用いる)と大豆用の播種ユニットを取り付けた畝立て用(図1(b))を用い、1工程で砕土と同時に施肥・播種を行う。26kW(35ps)のトラクタを用いると平畝栽培で約30a/h(作業速度0.6m/s、3条播種、作業幅2.1m)、畝立て栽培で約15a/h(作業速度0.5m/s、2条播種、作業幅1.5m)の作業が可能で、慣行と遜色ない。
  • 麦類の最大繁茂期(南東北では播種後50日頃)に地上部乾物重で150g/m2、LAIで3以上を確保できれば、無中耕無培土でも抑草効果が期待できる(図2図3)。
  • 黒ボク土の圃場では生育初期の麦類との競合により減収する傾向があるが、沖積土の圃場ではリビングマルチ栽培と慣行栽培で子実収量に違いは認められない(表1)。子実成分含有率については、沖積土、黒ボク土圃場ともに慣行栽培と差が認められない。

成果の活用面・留意点

  • 大豆の播種量、施肥量は慣行に準じ、麦類の播種量は10kg/10a程度とする。大豆は適期に播種し、耐倒伏性の品種を用いる。栽培の詳細については「麦類をリビングマルチに用いる大豆栽培技術マニュアル」(東北農研・中央農研 2010)を参照する。
  • 大麦、小麦ともに低温で生育が良好なので、大豆の生育に支障がない範囲の早播は麦類の生育量確保に有効である。なお、高温では大麦よりも小麦の生育が優る傾向がある。
  • 播種後30日頃の麦類の地上部乾物重が50g/m2を下回った場合には、最大繁茂期に150g/m2を得られない可能性が高いので、早期に中耕培土などの防除手段を講じる。
  • 実施した圃場試験で得られた麦類の生育量の範囲(地上部乾物重で最大約390g/m2)では、麦類の生育過剰に起因する大豆の減収は生じない。
  • タデ類など種子の大きな一年生雑草や多年生雑草よりも、シロザ、ヒユ類など種子の小さな一年生雑草に対する抑草効果が高い。

具体的データ

図1 (a)平畝用(3条播種)と(b)畝立て用(2条播種)の麦類・大豆同時播種機。

図2 抑草効果が認められた圃場における播種後 50 日目の大豆と麦類の地上部乾物重(左)と雑草発生量(右)

図3 抑草効果が認められた圃場での播種後 50 日目の麦類の地上部乾物重と LAI

表1 リビングマルチ大豆栽培における子実収量・品質と収量関連要素

その他

  • 研究課題名:カバークロップ等を活用した省資材・環境保全型栽培管理技術の開発
  • 中課題整理番号:214c
  • 予算区分:基盤、交付金プロ(IWM)
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:小林浩幸、好野奈美子、敖 敏、内田智子、山下伸夫、村上敏文
  • 発表論文等:
    1)好野ら (2009) 雑草研究 54: 139-146
    2)小林ら (2008) 雑草研究 53: 63-68