複合交信かく乱を基幹技術としたリンゴ農薬50%削減体系

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

複合交信かく乱剤など成分カウントのない農薬の活用、地域重要病害の特定に基づく薬剤選択で、落花10日期以降の殺菌剤散布を15日間隔に広げることなどにより、リンゴの主要病害虫の被害を実用的な水準に抑制できる農薬50%削減防除暦を構築した。

  • キーワード:リンゴ、交信かく乱剤、特定防除資材、散布間隔、特別栽培
  • 担当:東北農研・省農薬リンゴ研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3496
  • 区分:東北農業・果樹
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

岩手県のリンゴ防除基準では「ふじ」で年間14回、43成分回数の農薬が散布されることになっており、環境や農作業者への配慮などから、農薬の削減が求められている。こうした背景から、特別栽培農産物認証の取得を目的に、農薬代替資材として期待される複合交信かく乱剤を基幹技術として、現地慣行に対し化学農薬を50%以下に削減したリンゴ病害虫の防除体系を岩手県盛岡地方において現地試験し、病害虫防除効果を実証する。

成果の内容・特徴

  • 複合交信かく乱剤(コンフューザR信越化学工業製)など成分カウントのない農薬を活用し、殺虫・殺ダニ剤7、殺菌剤10、除草剤2及び植調剤2の合計21成分回数で防除体系を構築する(表1)。これは岩手県の「ふじ」の防除基準である43成分回数の半分以下に該当する。
  • コンフューザRを5月中旬に設置し、芽出10日期あるいは落花期の有機リン剤、6月中旬のモスピラン顆粒水溶剤4000倍、7月中旬の有機リン剤、8月上旬のネオニコチノイド剤散布により、キンモンホソガ、モモシンクイガ及びハマキムシ類による被害を、地域慣行防除区(40成分回数)と比べて遜色ない程度に抑制できる(表2表3表4)。
  • 落花期と落花10日期に、実証試験地で罹病率の高い褐斑病に対し効果の高い殺菌剤を散布することにより、それ以降の殺菌剤散布を15日間隔とした体系で主要病害を十分に抑制できる(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • 殺菌剤10成分で防除するために、「岩手県における5~6月の薬剤選択によるリンゴ病害の総合防除体系」(平成18年度研究成果情報)をさらに発展させた落花10日以降の15日間隔防除体系とした。本防除体系は、実証試験地では褐斑病等の主要病害の発生を抑えることができたが、その適用地域は検証していない。
  • 農薬50%削減の基本防除暦はシーズン前に作成するが、一定の目安と考え、予察の結果に基づき散布期日や薬剤を決める。
  • 農薬50%削減体系をいきなり実施するのではなく、交信かく乱剤利用を先行させた上で、病害虫密度や被害程度を確認しながら段階的に農薬の削減を図る必要がある。
  • 8月下旬の殺虫剤はシンクイ被害が目立つ場合などに限って使用する。
  • 本技術体系の詳細を記した「農薬50%削減リンゴ栽培マニュアル」は東北農研センターのウェブサイトからダウンロードできる。

具体的データ

表1 現地実証試験に供した農薬 50 %削減防除体系の 1 例

表2 キンモンホソガによる9月の寄生葉率

表3 収穫期の「ふじ」におけるモモシンクイガの被害果率

表4 収穫期の「ふじ」におけるハマキムシ類の被害果率

その他

  • 研究課題名:フェロモン利用等を基幹とした農薬を50%削減するリンゴ栽培技術の開発
  • 中課題整理番号:214o
  • 予算区分:交付金プロ(農薬削減リンゴ)
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:高梨祐明、猫塚修一(岩手農研セ)、土師 岳、足立嘉彦、新井朋徳、豊島真吾