野菜可食部カドミウム濃度低減化におけるうね内部分施用による苦土石灰量削減

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要約

苦土石灰と化成肥料を同時に、うね内に部分施用(幅20cm・深さ20cm)すると、エダマメ、ハクサイ、キャベツの可食部カドミウム濃度を従来の全面施用と同等程度に低減可能であり、全面施用と比べて資材施用量を4~6割削減できる。

  • キーワード:うね内部分施用、カドミウム、エダマメ、ハクサイ、キャベツ
  • 担当:東北農研・カドミウム研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3464
  • 区分:東北農業・基盤技術(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

野菜等のカドミウム(Cd)濃度の国際基準値が定められ、今後想定される国内基準値の設定に向け、可食部Cd濃度低減のための対策技術を早急に確立することが強く求められている。アルカリ資材を施用して土壌pHを上げれば、野菜のCd吸収を抑制できる可能性があるが、低pH圃場では、施用量が多くなり、コストが問題となる。一方、うね内部分施用法(部分施用)はキャベツ、ハクサイ作等における単位面積当たり施肥量を削減できる。そこで、この施用法を利用し、苦土石灰と化成肥料を同時に、うね内に部分施用して可食部Cd濃度の低減効果を明らかにし、施用量を削減できる新たな技術の開発を図る。

成果の内容・特徴

  • 従来の全面施用では、圃場全面に深さ10cm程度まで資材を混和するが、うね内部分施用機を用いる部分施用では、うね中央部の播種または定植位置付近の幅20cm・深さ20cm程度の部分に帯状に資材を施用できる(図1)。部分施用による可食部Cd濃度低減のためには、苦土石灰と化成肥料を同時に施用する。
  • エダマメについては、部分施用の幅20~30cmの違いは収量に影響しない(表1)。また、部分施用の幅20cmでは、苦土石灰無施用と比べて子実Cd濃度が低いが、施用幅25~30cmおよび全面施用では、苦土石灰無施用との差がない(図2)。部分施用の幅20cmは全面施用と比べて資材施用量を4割程度削減できる。
  • ハクサイおよびキャベツについては、目標pH6.2で比較すれば、全面施用と部分施用の収量および結球部Cd濃度は同等である(表2)。部分施用は全面施用と比べて資材施用量を6割程度削減できる。

成果の活用面・留意点

  • エダマメは水田転換畑初年目(下層黒ボク灰色低地土:0.1M塩酸可溶性Cd濃度1.1mg/kg)、ハクサイとキャベツは牧草地(漂白化低地水田土:0.1M塩酸可溶性Cd濃度3.0mg/kg)で試験を実施した。苦土石灰は粒状・アルカリ分55%を使用した。
  • うね内部分施用機は2条用と3条用が市販されている。

具体的データ

図1 全面施用と部分施用の施用域の違い

図2 エダマメ子実 Cd 濃度の比較

表1 エダマメ処理区の資材施用量と収量

表2 施用法によるハクサイとキャベツの収量および結球部 Cd 濃度の比較

その他

  • 研究課題名:水田・転換畑土壌及び作物体中のカドミウムの存在形態等動態解明と低吸収系統の開発
  • 中課題整理番号:323b
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:三浦憲蔵、戸上和樹、吉住佳与、工藤一晃、青木和彦、屋代幹雄、松尾健太郎、島 秀之(宮城古川農試)、小野寺和英(宮城古川農試)
  • 発表論文等:三浦ら(2009)東北農業研究、62:181-182