汎用性が高く短期間で作目切替ができる簡易耕同時施肥播種技術

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

前作物収穫後不耕起圃場において、浅いチゼル耕と同時に肥料・種子を落下散布することにより、高能率な作目切替作業が1行程でできる。小麦・ソバの他、大豆・ナタネにも適用可能である。ロータリ耕方式と比べて燃料消費量が少ない。

  • キーワード:農業機械、播種機、簡易耕、チゼルプラウ、大豆、麦、ソバ、ナタネ
  • 担当:東北農研・東北水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3535
  • 区分:東北農業・基盤技術(作業技術)、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

水田輪作では、二毛作により圃場を100%活用して食糧生産性を向上させることの重要性が増している。しかし東北地方のような寒冷地では、作目切替に時間的余裕が無く、作業競合が起こりやすい。加えて水田転換畑では、降雨により作業可能日数が大きく減少しがちである。また、生産コスト低減のためには、作目が増加しても作業機が共通に使用できることが望ましい。そこで、簡易耕と同時の施肥播種により、土壌の状態に影響されにくく、多作物に適用可能で高能率な作目切替技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 試作した簡易耕同時施肥播種機(チゼルプラウシーダ)は、チゼルプラウ、播種装置および施肥装置で構成される(図1)。播種装置・施肥装置はホッパ、モータ駆動の繰り出し機構および落下ホースからなり、開溝や覆土など、土壌と接触する機構は持たない。種子・肥料は地上20~30cmに位置する落下ホース端から放出され地表に落下する。播種ホース端に拡散板を装着すると散播に、装着しないと広幅条播になる。播種深は、チゼル耕深から地表面までに分布する。
  • 試作機は、前作物収穫後の不耕起状態から1行程で耕起・施肥・播種作業を行うことができ、小麦・大豆・ナタネ・ソバに利用可能である(表1表2)。作業速度は土壌状態、トラクタ牽引力および種子・肥料の繰り出し能力などにより制限され、1~2m/s程度である。
  • ソバ播種作業において慣行の逆転ロータリ浅耕同時散播方式と比較すると、試作機の圃場作業量は2倍程度、単位面積あたりの燃料消費量は半分以下である(表2)。
  • チゼルプラウのチゼル先端形状の変更や、カゴローラ後方へのスプリングタイン式レーキの装着により、播種作業時の砕土率を向上させることができる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 前作物収穫から短期間に作目を切替えたい場面で利用できる。例えば水稲収穫後の小麦播種では、ロータリ耕をベースとした作業方式に比べ2~3倍の作業速度である。
  • 深い耕起溝に埋土される種子を減らし、前作物残渣や大土塊がチゼル前に滞留しないように、チゼルプラウの最大耕深ではなく、15cm程度に耕深を設定する。
  • 苗立ち率は一般的な整地播種に比して低いため、十分な苗立ち数を確保できる程度に播種量を調整する。ただし、苗立ち率が不安定なことにも注意が必要である。
  • 播種前の雑草繁茂状況により、特に夏作物では、播種前もしくは直後の非選択性除草剤散布が必要となる。
  • チゼルプラウによる耕起同時施肥播種については、北海道農試による特許(第2896506号、「チゼルプラウ・施肥・播種装置」)がある。

具体的データ

図1 試作した播種機および主要諸元

表1 小麦・大豆・ナタネの播種作業結果

表2 ソバ播種作業の慣行との比較

図2 試作機構成と砕土率

その他

  • 研究課題名:東北地域における高生産性水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:211k.3
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:天羽弘一、大谷隆二、澁谷幸憲、中山壮一