日本短角種を借腹とする黒毛和種胚移植子牛の哺育期における生育特性

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要約

放牧飼養において日本短角種母牛を借腹として分娩、哺育される黒毛和種胚移植子牛は、舎飼において黒毛和種母牛に哺育される黒毛和種子牛に比べて、生時から1カ月齢にかけての増体が著しく高い。初期発育の優位性は放牧終了の9カ月齢時まで維持される。

  • キーワード:日本短角種、親子放牧、泌乳能力、胚移植(ET)、放牧育成
  • 担当:東北農研・日本短角研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3562
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

日本短角種(短角牛)の特徴は放牧適性の高さと泌乳能力の高さである。ふんだんに乳を飲んだ短角子牛の発育は放牧飼養においても優秀である。しかし、黒毛和種子牛(黒毛子牛)と比較して価格が低いため、短角繁殖農家の収益性を向上させるには胚移植(ET)により黒毛子牛生産を短角牛の夏山冬里方式に融合させることも有効な手段と考えられる。そこで、子育て能力の高い短角母牛を借腹としてETを行い、そこから生産される黒毛子牛を親子放牧し、哺育期における生育特性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 短角母牛を借腹として放牧地で分娩、親子放牧する黒毛ET子牛(放牧・短角母牛区)は、飲乳量が過多による下痢などの体調不良はなく、同じ血統で、舎飼において黒毛母牛に育てられる黒毛子牛(舎飼・黒毛母牛区)に比べて、生時から1カ月齢にかけての日増体量が著しく高い(図1)。
  • 舎飼・黒毛母牛区の黒毛子牛の発育は、日本飼養標準・肉用牛(2008年版)における標準発育曲線と差がない。この結果は、放牧・短角母牛区の黒毛ET子牛の良好な発育が子牛自身の遺伝的能力ではなく、短角母牛の母性効果、すなわち泌乳能力が優れることに関連することを示している(図12)。
  • 2月の舎飼期に生まれ、5月から岩手県下の公共草地において放牧を開始し、放牧終了まで短角母牛と親子放牧する黒毛ET子牛の体重は、放牧開始時で標準発育曲線より高い。放牧期間中も標準発育曲線より高く推移し、放牧後半から標準発育曲線と差が小さくなり、放牧終了の9カ月齢時は、やや高くなるか同等になる。初期発育の優位性は放牧終了時まで維持される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 短角牛の放牧飼養に黒毛ET子牛を導入することにより、黒毛子牛の低コスト生産が可能となり、短角牛生産地域の収益性向上と経営の安定に貢献する。
  • 短角繁殖経営における黒毛ET子牛導入の経営評価は、小梨ら(岩手農研セ研報3,p109-114,2003)の報告を参考にする。

具体的データ

図1 黒毛子牛の日増体量の比較

図2 黒毛子牛の初期発育の比較

図3 岩手県下の公共草地において短角母牛と親子放牧する黒毛 ET 子牛の発育

その他

  • 研究課題名:公共草地を基軸とした日本短角種等の放牧型牛肉生産と地域活性化方策
  • 中課題整理番号:212d.2
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:山口学、東山雅一、池田堅太郎、竹之内直樹