リンゴの樹冠下をバーナーで除草すると樹上のナミハダニ密度を抑制できる

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

樹冠下雑草にはナミハダニの増殖源となる草種があるため、除草剤を処理すると、生息場所を失ったハダニが樹上に登り、被害を助長する恐れがある。そこで、雑草をハダニと供にバーナーで焼き払うと、除草後の樹上密度の上昇を抑制することができる。

  • キーワード:ナミハダニ、リンゴ、樹冠下除草、バーナー、除草剤削減
  • 担当:東北農研・省農薬リンゴ研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3496
  • 区分:東北農業・果樹
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

わい化栽培リンゴ樹の樹冠下雑草は除草剤以外に適当な防除手段がなく、特別栽培に向けた農薬削減の阻害要因となっている。さらに、樹冠下にナミハダニの好む草種が占優していることが多く、除草によって生息場所を失ったナミハダニの樹上への移動を助長し、樹上密度を高める恐れがある。そこで、雑草とハダニを同時に防除する方法として、樹冠下雑草のバーナー処理を行い、その後の雑草再生とナミハダニ樹上密度に及ぼす影響を評価する。

成果の内容・特徴

  • わい化栽培リンゴ樹の樹冠下雑草が焦げる程度までバーナーの炎を当てる(乾熱処理)と、最長で2ヶ月間の抑草効果が認められる(表1)。
  • 処理区域に、雑草が充分に濡れるくらいの水を撒いてからバーナーの火を当てる(湿熱処理)と、抑草期間がやや短くなるが、高熱による樹体の障害がなく、充分な除草効果が得られる(表1及び図1)。
  • 乾熱処理した区の樹上ナミハダニ密度は、対照区の密度に比べて低く推移する。湿熱処理した場合にも、ナミハダニの樹上密度には同等の効果が認められる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 多目的中空器バーナー(ピリオン社製,発熱量130,000kcal/hr)を用いて、1樹当たり9㎡(3×3m)を処理するのに20~30分を要する。
  • ナミハダニには草種に対する選好性があるので、樹冠下にオオイヌノフグリやヒメオドリコソウなどナミハダニが好む草種が繁茂した環境に適用すると効果が高い。
  • リンゴ樹と下草を移動しないリンゴハダニについては、下草のバーナー処理と樹上密度の関係は認められない。
  • ナミハダニの越冬明け成虫が下草に集まる春期に実施すると、高熱による樹体への影響が少なく、抑草やハダニの樹上密度抑制に効果的である。

具体的データ

表1 樹冠下雑草のバーナー処理による除草効果

図1 バーナー処理9日後の状態:(左)乾熱処理;(右)湿熱処理

図2 樹冠下雑草をバーナー処理したリンゴ樹上のナミハダニ密度の推移

その他

  • 研究課題名:フェロモン利用等を基幹とした農薬を50%削減するリンゴ栽培技術の開発
  • 中課題整理番号:214o
  • 予算区分:交付金プロ(農薬削減リンゴ)
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:高梨祐明、豊島真吾、小野浩司(岩手農研セ)、田村博明(岩手農研セ)、太田智彦、金光幹雄
  • 発表論文等:高梨祐明ら(2009)北日本病害虫研究会報.60:274-276