リンゴ褐斑病菌のストロビルリン系殺菌剤に対する感受性

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要約

リンゴ褐斑病菌のストロビルリン系殺菌剤であるクレソキシムメチル(以下KSM)に対する感受性のベースラインは、培地上における最低生育阻止濃度(MIC)で0.25ppm以下と考えられる。岩手県内のリンゴ園から採集した褐斑病菌にはベースラインを上回るものは検出されず、現時点ではKSMに対する感受性は低下していない。

  • キーワード:ストロビルリン系殺菌剤、リンゴ褐斑病、感受性のベースライン
  • 担当:東北農研・省農薬リンゴ研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3496
  • 区分:東北農業・果樹
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ストロビルリン系殺菌剤は、防除スペクトラムが広く、卓越した残効を有することから、リンゴにおいても広く使用されている。しかし、本剤に対しては、国内外の多くの植物病原糸状菌で耐性菌の発生事例が報告されている。これまでわが国のリンゴ栽培では、耐性菌による本剤の効力低下事例は知られていないが、その持続的な使用を考える上で、防除対象となる病原菌の感受性に関する知見が必要である。そこで、リンゴ褐斑病菌のストロビルリン系殺菌剤であるクレソキシムメチル(以下KSM)に対する感受性を調査する。

成果の内容・特徴

  • 岩手県内の3ヶ所の放任園から分離したリンゴ褐斑病菌のKSMに対する感受性(培地上における最低生育阻止濃度:MIC)を調査した結果、供試した195菌株のMICは0.05~0.25ppmに分布し、この値が褐斑病菌のKSMに対する感受性のベースラインと推定される(表1)。
  • 感受性のベースライン値(MIC 0.25 ppm以下)が明らかになったことから、この値を超える菌株は耐性菌である可能性があり、褐斑病菌におけるKSM感受性のモニタリングに活用できる。
  • 2006~2008年に岩手県内の薬剤防除を実施しているリンゴ園17ヶ所から分離した1,406菌株のMICも全て0.25ppm以下を示し、ベースラインの値と一致している。したがって、現時点では耐性菌と考えられる菌株は検出されず、KSMに対する感受性は低下していないと考えられる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 感受性検定に用いる培地は、高圧滅菌したジャガイモ煎汁寒天培地(PDA)に、ジメチルスルオキシド(DMSO)に溶解した市販のクレソキシムメチルドライフロアブル剤を有効成分のKSMが最終濃度0、0.01、0.05、0.10、0.25、0.5、1および5ppmとなるよう添加して作成する。予めPDA培地で2~3週間程度培養した褐斑病菌の菌叢を滅菌水中で磨砕・懸濁して得た菌糸懸濁液を検定培地上に3μlずつ滴下し、23°Cで2週間培養した後、菌叢コロニーの生育を観察して、最低生育阻止濃度(MIC)を求める。

具体的データ

表1 放任園から分離したリンゴ褐斑病菌のクレソキシムメチルに対する感受性

表2 薬剤防除を実施しているリンゴ園から分離したリンゴ褐斑病菌のクレソキシムメチルに対する感受性

その他

  • 研究課題名:フェロモン利用等を基幹とした農薬を50%削減するリンゴ栽培技術の開発
  • 中課題整理番号:214o
  • 予算区分:交付金プロ(農薬削減リンゴ)
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:足立嘉彦、土師岳、高梨祐明、伊藤伝
  • 発表論文等:足立ら(2010) 東北農研センター報告111:85-88