無菌栽培では幼植物の生育や窒素吸収量へのPEONの効果は見られない

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要約

PEON (phosphate buffer extractable organic nitrogen) を添加した培地で、PEON吸収能力が異なるといわれているリーフレタスとチンゲンサイを無菌条件で栽培しても、生育や窒素吸収量に対するPEONの効果はいずれも幼植物においては見られない。

  • キーワード:有機態窒素、リン酸緩衝液抽出、直接吸収、PEON、幼植物
  • 担当:東北農研・カバークロップ研究チーム
  • 代表連絡先:電話024-593-6176
  • 区分:東北農業・基盤技術(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

土壌中には約8000Daの分子量を持つ有機物画分PEONが蓄積しており、これを窒素源として植物が直接吸収し利用できる可能性があるとの知見が示され話題を呼んでいる。そこで、PEON吸収能力が異なるといわれているリーフレタス(吸収能力低)とチンゲンサイ(吸収能力高)を供試植物とし、PEONを添加した培地で無菌栽培することで、PEONが微生物による分解を経ずに、直接吸収され窒素源として効果を示すかどうかを確認する。他の窒素源と比較するために、無機態窒素として硝酸塩,および有機態窒素として植物による吸収利用が報告されているアミノ酸それぞれの添加処理を設け、植物の生育と窒素吸収量を調査する。

成果の内容・特徴

  • 無菌条件で窒素源として硝酸塩、アミノ酸、またはPEONを添加した培地で2週間(播種後0~14日)栽培を行うと、リーフレタスの生育は、地上部、根ともに硝酸塩の添加で増加し、チンゲンサイでは硝酸塩とアミノ酸でそれぞれ増加する。しかし、PEON添加ではチンゲンサイ、リーフレタスとも生育は増加しない(図1)。
  • リーフレタスの窒素吸収量は硝酸塩の添加で増加し、チンゲンサイでは硝酸塩とアミノ酸でそれぞれ増加する。しかし、PEON添加ではチンゲンサイ、リーフレタスとも窒素吸収量は増加しない(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 添加したPEONは、黒ボク土(pH 5.7、炭素含有量5.14%、窒素含有量0.37%)から中性リン酸緩衝液で抽出し、エバポレーターで濃縮後、ゲルろ過分取カラムで分取し、脱塩したものである。
  • 無菌栽培で添加したアミノ酸は、PEONのアミノ酸組成に合わせて15種類のアミノ酸を混合して作成したものである。
  • バーミキュライトへ添加したPEONの水抽出による回収率は約90%であり、PEONのバーミキュライトへの著しい吸着は認められない。

具体的データ

図1 リーフレタスとチンゲンサイの生育量 ( 播種後 14 日 )

図2 リーフレタスとチンゲンサイの窒素吸収量 ( 播種後 14 日 )

その他

  • 研究課題名:カバークロップ等を活用した省資材・環境保全型栽培管理技術の開発
  • 中課題整理番号:214c.
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2004~2005年度
  • 研究担当者:宮沢佳恵、村山徹、武田容枝(東大農)
  • 発表論文等:
    1)Miyazawa, Murayama (2007) Soil Sci. Plant Nutri. 53(1) :1-6.
    2)Miyazawa et al. (2008) Soil Sci. Plant Nutri. 54(2) :247-252.
    3)宮沢、村山(2009)土肥誌、80(3) :263-267.
    4)宮沢ら(2010)土肥誌、81(1) :36-38.