不織布ポットの埋設によるマルチカラー根染色法の野外試験への適用

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要約

不織布ポットをあらかじめ埋設して植物を生育させ、掘り上げて乾燥させることで、野外試験でも0.5気圧程度の加圧で植物根ごとに異なる着色液を注入することができる。これにより混植した植物それぞれの根系分布調査が可能となる。

  • キーワード:混植、不織布ポット、マルチカラー染色、緑肥
  • 担当:東北農研・カバークロップ研究チーム
  • 代表連絡先:電話024-593-6176
  • 区分:東北農業・基盤技術(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

マルチカラー染色法は、植物が萎凋しはじめる程度に土壌を乾燥させて、地上部から切り花着色液を根に注入して根系全体を染める技術である(H16東北農業研究成果情報)。この方法により異なる種類の植物の根を染め分ければ、リビングマルチや混植など、隣接して生育する複数の植物の根の解析が可能である。しかし、野外試験では土壌水分量が高く液の注入が妨げられるため、染色前に屋根を設けて土壌を乾燥させ、さらに液注入圧を5気圧まで上げる必要がある(H17東北農業研究成果情報)。この方法によりトマトやナスでは染色が可能であるが、単子葉植物では注入圧を高めると地際部での液漏れが顕著であり、根端まで染まりにくい。さらに土壌や気象条件によっては屋根を設置しても十分に土壌が乾燥しない。そこで、養水分を通す不織布ポットをあらかじめ野外試験の区画内に埋設する方法により土壌を乾燥させ、根の染色を容易にする。1例として単子葉植物を含めた3種の植物の混植栽培における根の分布解析を行う。

成果の内容・特徴

  • 植物の生育途中で不織布ポットを掘り上げ、植物が萎凋しはじめる程度に土壌を乾燥させてから染色すると、0.5気圧程度の加圧でソルガム、クロタラリア及びヒマワリの3種とも根の先端まで染色される。したがって、不織布ポットを水平に5cm間隔の輪切りにして根を深さ別に切断しても、種毎の根が判別できる(図1)。
  • 根の種別、深さ別乾物重の解析により、種毎の根量や根系分布の違いが検出できる(図2表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本試験で用いた不織布ポットは有底で遮根性のあるものである(ルートラップ、桃木商店)。
  • 植物の種類や生育期間によっては、不織布ポットの容量が根の生育を制限するため、あらかじめ不織布ポットの容量や掘り上げ時期を検討する必要がある。
  • 単子葉植物では樹脂(トマックNS10、三恒商事)を地際部に塗布すると液漏れがなくなりさらに染色が容易になる。

具体的データ

図1 野外試験の模式図

図2 混植条件下の個体あたりの根の深さ別乾物重

表1 2元配置分散分析による根乾物重の種間と深さ間の違い、およびそれらの交互作用の有意確率(p値)

その他

  • 研究課題名:カバークロップ等を活用した省資材・環境保全型栽培管理技術の開発
  • 中整理番号:214c
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:宮沢佳恵、村上敏文、武田容枝、村山徹
  • 発表論文等:1) Miyazawa et al. (2010) Plant Soil. 328 : 231-239