ダイズの連続欠株はシロザとホソアオゲイトウの大型化の原因となる

要約

寒冷地ダイズ作では、ダイズの連続欠株がなければダイズ播種1週以降に発生したシロザおよびホソアオゲイトウは大型化しない。年次、草種によらず、雑草の草高は、発生が1週早いと約20cm、連続欠株が約0.5mまたは1mあると約30cmまたは60cm高くなる。

  • キーワード:ダイズ、大型広葉雑草、シロザ、ホソアオゲイトウ、連続欠株
  • 担当:東北農研・東北水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3585
  • 区分:東北農業・作物(畑作物栽培)、共通基盤・雑草
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

シロザ、ホソアオゲイトウなどの広葉雑草は、時にダイズの草高を大幅に超えて大型化するため収穫作業の障害となることがあり、特に高密度で発生した場合には長時間の手取り除草を余儀なくされる問題雑草である。転作田におけるダイズ栽培では、湿害およびそれに起因する立枯性病害による連続欠株を生じやすい。こうした連続欠株の発生は、広葉雑草、特にベンタゾン液剤の効果が期待できないシロザやホソアオゲイトウが大型化してしまう原因の一つと考えられる。他方、播種前に実施される耕耘作業は、それ以前に発生していた雑草に対して必ずしも十分な殺草効果がないことも認識されつつある。そこで草高を指標として、発生時期の異なる雑草の生育に対する連続欠株の影響を定量化し、ダイズの苗立ち確保と播種前を含む初期の雑草防除の重要性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ダイズに連続欠株がない場合、ダイズ株間に発生したシロザおよびホソアオゲイトウが、ダイズの草高を上回って大型化するのはダイズ播種前後までの発生個体だけで、ダイズ播種後1週以降の発生個体は大型化しない(図1)。
  • 雑草の最大草高は、シロザ、ホソアオゲイトウの種の違いによらず、発生時期が1週早まると約20cm高くなる。また約0.5mの連続欠株では約30cm、約1mの連続欠株では約60cm最大草高が高くなる(表1、図2)。
  • 従って欠株のない場合と比べ、約0.5mの連続欠株では約2週間、また約1mの連続欠株では約4週間の除草期間の延長が必要となる(表1)。
  • 以上から、ダイズの収穫作業の障害となる大型化個体を防除するためには、連続欠株を発生させないようダイズの苗立ち確保に努めるとともに、播種前を含む初期の雑草防除を徹底する必要がある。

成果の活用面・留意点

  • ダイズ作の雑草防除において、ダイズの苗立ち確保と初期防除の重要性を示す資料として普及指導場面での活用が期待される。
  • 本成果は、岩手県盛岡市の東北農業研究センター内の灰色低地土(2008年および2010年)または黒ボク土(2009年)の転換田で6月上旬に播種(条間75cm、株間20cm、2粒播)したダイズ品種スズカリの株間の中央に、ペーパーポットで育成した雑草幼植物を移植した結果に基づく。また雑草種子をペーパーポットに播種した時期を発生時期と見なした。
  • 除草体系は、播種後土壌処理剤ジメテナミド・リニュロン乳剤(500ml/10a)の後、1または2回の中耕とベンタゾン液剤(100ml/10a)およびセトキシジム乳剤(200ml/10a)の散布を行った。実験区内については,さらに手取り除草により調査対象外雑草を防除した。

 具体的データ

発生時期を異にする雑草及びダイズの草高の推移

表1 雑草の最大草高に対する発生時期と連続欠株の効果に関する回 帰分析結果

図2 雑草の最大草高にたいする発生時期と連続欠株の効果

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
  • 中課題整理番号:211k.3
  • 予算区分:交付金プロ(総合的雑草管理(IWM))
  • 研究期間:2007~2010 年度
  • 研究担当者:中山壮一、天羽弘一、橘雅明