フェストロリウムのTDN含量推定式

要約

フェストロリウムサイレージのTDN含量は成分分析によるリグニン含量、脂肪含量、灰分含量の値から推定できる。推定式はTDN含量=-3.397×リグニン+2.860×脂肪-1.552×灰分+80.133であり、既存のイネ科牧草向けの推定式より精度が高い。

  • キーワード:フェストロリウム、TDN含量、推定式、サイレージ
  • 担当:東北農研・寒冷地飼料資源研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3562
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

自給粗飼料の栄養価を正確に把握することは家畜飼養において重要である。飼料の栄養価の一指標であるTDN含量は測定に多大な労力がかかるため、飼料成分含量からTDN含量を推定する式が多く提案されている。近年、フェストロリウムは耕作放棄水田跡地等への導入草種として期待されているが、従来のイネ科主体牧乾草向けの推定式の適合性は不明である。そこで、フェストロリウム専用のTDN含量推定式を作成し、従来式との比較からその適合性を確認する。

成果の内容・特徴

  • 推定式作成に用いたサンプルは1991~2003年に調製した4倍体フェストロリウム(エバーグリーン、パウリタ)のサイレージ33点(1番草18点、2番草11点、3番草4点)、および乾草4点(1番草3点、3番草1点)である。このサンプルの繊維成分(OCW)含量は乾物中48.2~73.6%、めん羊を用いた消化試験によって求めたTDN含量は乾物中48.8~68.8%である(表1)。一方、この推定式の精度を検定するために用いたサンプルは2007年に調製した4倍体フェストロリウム(東北1号)のサイレージ6点(1番草)である。このサンプルのOCW含量は乾物中54.7~68.1%、めん羊を用いた消化試験によって求めたTDN含量は乾物中49.8~64.6%である(表1)。
  • フェストロリウムサイレージおよび乾草のTDN含量と有意な相関が得られた飼料成分は消化性と関連する繊維成分(OCW、Oa、Ob、OCC)含量およびリグニン(Lignin)含量、灰分(CA)含量、脂肪(EE)含量であり、寄与率の高い複数の回帰式が得られた。
  • 推定精度(Rank)およびBaisの値から式2が最も有効と判断された(表2)。式2および既存のTDN推定式(式3)を用いて求めた推定値とTDN実測値との相関係数はいずれも0.9以上の値を示すが、回帰直線の傾きおよびy軸との切片の値から判断すると式2の精度が式3より高い(図1左、中)。
  • 分析項目を少なくし、より簡易にTDN含量を推定するためには式1を用いるのが望ましい。この場合、既存の推定式(式3)より精度は高いが、推定値は実測値より約3ポイント高くなる可能性がある(図1右)。

成果の活用面・留意点

  • フェストロリウムのTDN含量推定に用いることができる。
  • 本成果は4倍体フェストロリウム品種での成果であり、草型の異なる6倍体のフェストロリウムについての推定精度は未確認である。

 具体的データ

表1.供試したフェストロリウム(サイレージ・乾草)の飼料 成分およびTDN含量の範囲(%DM)

表2.推定式の精度の検定

図1 . 「東北1 号」のT DN 実測値* と推定式1 、2 および3 から求めた推定値の関係 * 1 サンプルあたり4 頭のめん羊を用いた消化試験の値

その他

  • 研究課題名:飼料生産性向上のための基盤技術の確立と土地資源活用技術の開発
  • 中課題整理番号:212e.2
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:1991~2010 年度
  • 研究担当者:嶝野英子、魚住順、近藤恒夫、大下友子