ペレニアルライグラス混播による耐湿性草種の導入は遊休水田の草地化が早い

要約

遊休水田に耐湿性の高いレッドトップ、リードカナリーグラスをペレニアルライグラスと混播して導入すると、牧草群落の形成が速やかで、雑草の侵入も少ない。この混播草地の植生は経年化に伴いレッドトップ・リードカナリーグラス優占植生へと移行する。

  • キーワード:混播、水田放牧地、耐湿性、ペレニアルライグラス
  • 担当:東北農研・寒冷地飼料資源研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3562
  • 区分:東北農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

東北地域の中山間地域では増加する遊休水田の有効活用対策として水田放牧への期待が高まっている。水田放牧地を永続的に利用するには耐湿性の高い牧草を導入する必要があるが、耐湿性草種のうち、レッドトップ(以下RT)とリードカナリーグラス(以下RCG)は水田放牧地における永続性は高いものの、初期生育は遅く、優占するまでに時間がかかる。そこで、初期生育が速やかなペレニアルライグラス(以下PR)を混播して導入することによって、造成初期の牧草形成を速やかにし、経年化にともないRTまたはRCGが優占する群落へと移行させる水田放牧地への牧草導入技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 9月中旬にRT「コモン」またはRCG「パラトン」(3kg/10a)とPR「フレンド」(1kg/10a)を混播し、化成肥料を窒素成分で3kgN/10a元肥として施用して水田放牧地を造成すれば、翌春の入牧前(5月)にPRが優占し、RTまたはRCGを単播する場合に比べてイヌナズナ、オランダミミナグサおよびタネツケバナ等の雑草の発生を抑制することができる(図1)。
  • PR混播草地のPRは放牧利用にともない衰退する。一方で、RTとRCGは経年化にともない被度を拡大し、造成から2年後には耐湿性の高いRTまたはRCGが優占する草地へと移行する(図1)。
  • PR混播草地の1年目放牧前および造成後1年目の乾物生産量は、RTまたはRCGを単播したときよりも高くなる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本試験に用いた遊休水田の土壌水分は晴天時においても64.9±2.5(%)と極めて高く、土壌の物理性を示す軟らか度の値も4.0±0.3(cm/drop)と高いことから、高湿潤の遊休水田を放牧地として利用する場合の牧草導入法として活用できる。
  • 造成時に土壌の窒素成分が多いと窒素反応性が高いPRのみが繁茂するので、RTとRCGの定着も確保しておくために、造成時の化成肥料の元肥は控えめにするのが望ましい。追肥は窒素成分で9kgN/10a/年となるよう年3回程度に分けて適宜施すとよい。
  • 図2の乾物生産量は放牧を模した定置コドラート内の多回刈乾物生産量の累計(5回/年)の結果であるため、放牧時乾物生産量とは絶対量の点で必ずしも一致しない。
  • RCGを播種する場合は、放牧牛の嗜好性に優れる低アルカロイド品種を用いる。

具体的データ

図1 水田放牧地における混播草地と単播草地の植生変化

図2 混播草地と単播草地の乾物生産量

その他

  • 研究課題名:飼料自給率向上に向けた多様な寒冷地飼料資源の活用技術の開発
  • 中課題整理番号:212e.2
  • 予算区分:基盤、委託プロ(えさプロ)
  • 研究期間:2008~2010 年度
  • 研究担当者:池田堅太郎