倒伏が少なく大粒でそば粉の白度が高いそば新品種「にじゆたか」

要約

そば「にじゆたか」は倒伏しにくく、千粒重・容積重ともに大きく子実外観に優れる。成熟期は「階上早生」より数日遅く「岩手早生」並で、収量は「階上早生」並である。白度が高く実需評価が良いそば粉がとれる。

  • キーワード:そば、にじゆたか、耐倒伏性、大粒、そば粉白度
  • 担当:東北農研・寒冷地特産作物研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3698
  • 区分:作物、東北農業・作物(畑作物品種)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

東北地域のそば栽培においては作付面積が近年13,500ha前後で推移し、全国の約30%を占める重要な産地となっている。一方、10アール当たりの平均収量は全国平均の約70%と低く、収量性や品質の向上と安定化に課題を抱えている。在来種や他産地からの導入品種利用や計画的な種子更新が行われていない等の状況もみられることから、特性の優れる東北地域向け新品種が育成されれば生産振興に寄与できると考えられる。そこで、経営の大規模化・機械化に適し収量安定につながる耐倒伏性や、良品質・多収などの優良特性を有する東北地域向け品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • そば「にじゆたか」は、東北農業研究センター資源作物育種研究室(現:寒冷地特産作物研究チーム)において、多収であるが晩生の栃木県在来種「葛生在来」と、早生で子実外観に優れる長野県在来種「戸隠在来(秋)」とを、交配用昆虫(アルファルファハキリバチ)を用いて2001年度に相互交配させて得た雑種集団から選抜・育成された系統である。
  • 東北地域で栽培されている標準品種「階上早生」や「岩手早生」に比べ、倒伏しにくい(表1、写真1)。
  • 子実は、千粒重が36g程度で「階上早生」を約5g上回り、大粒である。容積重も「階上早生」を約30g上回る630g程度と大きく、充実感があり外観に優れる(表1)。
  • 成熟期は、育成地では「階上早生」より4日遅く「岩手早生」並である。系統適応性検定試験において青森県では「階上早生」より8日遅い(表1)。
  • 収量は、育成地の標準播種期では「階上早生」をやや上回るが、晩播(8月中旬頃)では低収となる(表1)。
  • 実需評価では、そば粉のL*値が高く、a*値が低く、淡緑味のある白度の高い実需ニーズに合うそば粉がとれる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 生態型は中間秋型で寒冷地以南の秋そば栽培に適する。
  • 耐湿性は強化されていないので、既存品種と同様に圃場の排水対策に努める。
  • 昆虫により花粉が運ばれ容易に他の品種と交雑するので、隔離採種により特性を維持し、計画的な種子更新を行う。隔離採種圃場は地形や障壁の有無なども加味して適地を選定し、周囲数kmの範囲では他品種の栽培を避け、なるべく圃場中心部から採種する。
  • 耐倒伏性を有するが、窒素過多により倒伏しやすくなるので、各県の指導事項を参考に適正な窒素施肥量(おおむね、2kg/10a程度)で栽培する。
  • 播種期が遅くなると子実が十分成熟せず収量が大きく低下するので、適期播種に努める。

具体的データ

表1 そば「東北1号」の試験成績

写真1 「東北1 号」と「階上早生」 の耐倒伏性の差

表2 そば粉の色相および白度

その他

  • 研究課題名:寒地・寒冷地特産作物の優良品種の育成及び利用技術の開発
  • 中課題整理番号:311f.2
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2002~2010 年度
  • 研究担当者:由比真美子、山守誠、本田裕、加藤晶子、川崎光代