いもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34を保有するイネ個体を選抜できるDNAマーカー
要約
DNAマーカーChu82、Chu87、Chu102、Chu4020は、いもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34保有品種と非保有ジャポニカ品種間で異なる増幅断片長を生ずる共優性のマーカーで、選抜育種に利用できる。
- キーワード:イネ、いもち病、圃場抵抗性、Pi34、DNAマーカー
- 担当:東北農研・病害抵抗性研究東北サブチーム
- 代表連絡先:電話0187-66-2772
- 区分:作物、共通基盤・病害虫、東北農業・作物(稲育種)、東北農業・基盤技術(病害虫)
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
イネ品種の持つ抵抗性を利用したいもち病防除が求められているが、抵抗性崩壊の危険性が低いとされる圃場抵抗性については、単離された遺伝子および有効なDNAマーカーが少ないことが、効率的な抵抗性付与を困難にしている。
陸稲由来のいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34についても、圃場での抵抗性検定よりも精度が高く、他のいもち病抵抗性遺伝子とのピラミディングに有効なDNAマーカーを用いた選抜が効率的である。
そこで、Pi34を保有するイネ個体を高精度かつ簡便に選抜できるDNAマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
- 開発したDNAマーカー Chu82、Chu87、Chu102、Chu4020は、11番染色体長腕上に座乗する圃場抵抗性遺伝子Pi34の近傍に位置している。マーカー間の物理距離は図1に示したとおりであり、組換えが生じる確率は極めて小さい。いずれのDNAマーカーもジャポニカ品種間において共優性で、その増幅断片長の差異はアガロースゲル電気泳動で明瞭に区別できる(図1)。
- これらのDNAマーカーは、Pi34保有系統「中部32号」「中国40号」「中国IL1号」と非保有品種「日本晴」「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「ちゅらひかり」間において、PCRの増幅断片長が異なる。Pi34非保有インディカ品種「Kasalath」間においてもChu4020以外は多型を生じる(表1)。
成果の活用面・留意点
- マーカー選抜の際は、親品種間で多型が生じるかどうか確認して使用マーカーを選択し、Pi34領域を挟み込むように2個のマーカーを用いるのが望ましい。
- Pi34については、本遺伝子を強く侵害するいもち病菌が陸稲から分離されている。
- 本マーカーのプライマー配列については特許出願の予定はない。利用希望者には利用許諾条件への同意後に情報を提供する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:食用稲における病害抵抗性の強化のための遺伝子単離と機作の解明
- 中課題整理番号:221f
- 予算区分:科研費・基盤
- 研究期間:2005~2010 年度
- 研究担当者:善林薫・鬼頭英樹・中島敏彦
- 発表論文等:Zenbayashi-Sawata K. et al (2007) Phytopathology 97:598-602