圃場抵抗性遺伝子Pi34はいもち病菌侵入後の菌糸伸展を抑制する

要約

圃場抵抗性遺伝子Pi34導入準同質遺伝子系統では、いもち病菌の表皮細胞への侵入率はPi34非保有品種と差がないが、葉鞘における菌糸伸展および葉身の病斑数・病斑面積率は減少する。これはPi34がいもち病菌の侵入後の菌糸伸展を抑制することを示す。

  • キーワード:いもち病、圃場抵抗性、Pi34
  • 担当:東北農研・病害抵抗性研究東北サブチーム
  • 代表連絡先:電話0187-66-2772
  • 区分:共通基盤・病害虫
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

持続的ないもち病抵抗性を持つイネ品種の育成のため、いもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34を導入したコシヒカリ準同質遺伝子系統「中国IL1号」を用いて、これまで不明であったいもち病菌感染時におけるPi34の作用機作を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「コシヒカリ」、圃場抵抗性遺伝子Pi34をコシヒカリに導入した準同質遺伝子系統「中国IL1号」、2種の圃場抵抗性遺伝子Pi34Piq6(t)を持つイネ系統「中部32号」の3品種系統へ親和性いもち病菌株Kyu89-246を噴霧接種すると、接種4日後の葉身表皮細胞へのいもち病菌侵入率は有意差がない(図1)。
  • いもち病菌株Kyu89-246を用いた葉鞘接種36時間後の「コシヒカリ」では菌糸の分岐と伸展が観察されたが、「中国IL1号」および「中部32号」では観察されない(図2)。
  • いもち病菌株Kyu89-246を用いた噴霧接種4日後の接種葉における病斑数は「コシヒカリ」よりも「中国IL1号」で有意に少なく、「中部32号」ではさらに少ない(図3)。
  • いもち病菌株Kyu89-246を用いた噴霧接種7日後および10日後の接種葉における病斑面積率は、「コシヒカリ」よりも「中国IL1号」で有意に低く、「中部32号」ではさらに低い(図4)。
  • いもち病菌の侵入率に有意差がないにもかかわらず、葉鞘細胞におけるいもち病菌侵入後の菌糸伸展が抑制され、葉身における病斑数および病斑面積率が減少していることから、Pi34はいもち病菌が侵入した後の菌糸伸展を抑制している。

成果の活用面・留意点

  • Pi34はいもち病菌侵入後の菌糸伸展を抑制する遺伝資源として育種利用が可能である。
  • 本成果情報のデータは全て室内試験の結果である。
  • 使用菌株・栽培条件によってイネが示す抵抗性の強さは変化することがある。

具体的データ

図1 いもち病菌付着器に対するイネ葉身表 皮細胞の反応型の比率

図2 イネ葉鞘表皮細胞におけるいもち病菌 菌糸伸展型の比率

図3 病斑数の比較

図4 室内検定法による圃場抵抗性の評価

その他

  • 研究課題名:食用稲における病害抵抗性の強化のための遺伝子単離と機作の解明
  • 中課題整理番号:221f
  • 予算区分:基盤、科研費
  • 研究期間:2007~2010 年度
  • 研究担当者:鬼頭英樹、善林 薫、小泉信三、中島敏彦
  • 発表論文等:鬼頭ら(2009)北日本病害虫研究会報、60:25-29