プラウ耕・グレーンドリル播種方式の寒冷地向け水稲乾田直播体系

要約

本方式の乾田直播体系においては、10a当たり労働時間は約6時間であり、直播適性の高い品種(「萌えみのり」など)を用いることで、600kg/10a程度の収量が得られ、60kg当たり費用合計は東北平均の57%まで低減する。

  • キーワード:乾田直播、プラウ耕、鎮圧、グレーンドリル
  • 担当:新世代水田輪作・高能率水田輪作
  • 代表連絡先:電話 019-643-3535
  • 研究所名:東北農業研究センター・生産基盤研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

プラウ耕・グレーンドリル播種方式の乾田直播は、(1)畑作用機械の汎用利用、(2)作業速度10km/h程度の高速作業、(3)プラウによる深耕と播種前の強鎮圧を特徴とし、大幅に省力低コスト化した作業体系の構築が期待できる。そこで、グレーンドリルやプラウなどの畑作用機械を所有する大規模水田作経営(乾田直播9.4ha:2011年)で営農実証試験を行い、基盤管理、除草体系、施肥体系など個々の技術を体系化し、経営全体でのコスト低減効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 圃場準備では、前年の秋から冬にかけてプラウ耕(チゼルプラウ、ディスクプラウを含む)を実施し、融雪後の圃場乾燥を促進させる。圃場が乾燥した後に、ディスクハローなどで整地する。圃場の高低差が10cm以上ある場合は、レーザー均平作業を行なう。その後、畔塗り機で畔塗り作業を行い、畦畔際をトラクタ車輪で踏んで畦畔漏水を防止する(図1)。
  • 播種作業は、気温が低い時期でもトラクタが圃場に入る条件が整えば作業可能であり5月上旬までに実施する。用水が通水する前から播種できるので、湛水直播よりも作業適期は長い(図1、2)。
  • 除草体系は、水入れ前の選択性茎葉処理剤と水入れ後の一発処理剤の2回の体系を基本とする(図1)。グレーンドリルは播種同時施肥が可能であり、肥効調節型肥料(LP30:LPS30:LPS60=3:2:5)を用いると、追肥省略が可能である。
  • 5年間の現地実証の結果、全圃場(延べ面積28.9ha)の平均苗立ち率は73%である。砕土率70%以上の条件で播種すれば、概ね60%以上の苗立ち率が得られる(図2)。
  • 良食味で稈長が短く直播適性の高い品種「萌えみのり」を用いれば、苗立ち数100本/m2以上で、通常の条件では全刈り収量で600kg/10aが得られる(表1)
  • 実証試験における10a当たり労働時間は約6時間であり、東北平均(2010年)の1/4である。収量611kg/10aの場合、60kg当たり費用合計は6,587円であり、東北平均の57%まで低下する(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象
    麦を大規模に水田輪作に取り入れている経営、大規模に乾田直播を導入したい経営
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等
    東北、北海道、関東で1,000ha
  • その他
    十分な経済効果を得るためには多収品種を用いることが前提であり、東北以外では品種、肥効調節型肥料の混合比、作期などについて、地域性に配慮する必要がある。

具体的データ

図1 プラウ耕・グレーンドリル播種方式乾田直播の作業体系

図2 実証圃場の苗立ち率(2007~2011年)

表1 実証圃場の苗立ちおよび収量

表2 生産コスト(2011年)

(大谷隆二)

その他

  • 中課題名:作業の高速化による高能率低投入水田輪作システムの確立
  • 中課題番号:111b1
  • 予算区分:交付金、委託プロ(水田底力4系)
  • 研究期間:2003~2011年度
  • 研究担当者:大谷隆二、関矢博幸、冠秀昭、中山壮一、小野洋、齋藤秀文、金井源太、迫田登稔(中央農研)、天羽弘一(畜草研)、高橋彩子(岩手農研)
  • 発表論文等:乾田直播栽培マニュアル Ver.2