イチゴの品種判別に適した多型性の高いSSRマーカー
要約
開発したSSRマーカー"FxaHGA02P13"は、供試した国内外のイチゴ75品種・系統において、単独で73品種・系統を同定でき、他のSSRマーカーと組み合わせることで近縁性の高い個体の識別も可能である。
- キーワード:イチゴ、品種判別、単純反復配列、DNAマーカー、SSRマーカー
- 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発、野菜ゲノム利用技術
- 代表連絡先:電話 019-643-3414
- 研究所名:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域、野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
一般にSSR(単純反復配列)マーカーは多型性が高く、比較的少数のマーカーで多数の品種を判別できる。近年、日本におけるイチゴの登録品種数は飛躍的に増加している。それら多数の品種を判別するための1手法として、増幅性や多型性に優れる品種判別用SSRマーカーを開発する。また、海外の品種群を対象とした分析において判別性能が高いと判定された2つのSSRマーカーについて、日本の品種群における判別性能を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 新規に開発した2つ、および既報の2つのSSRマーカーは、供試した国内外の75品種・系統(表1)において高い多型性を示し、特に、"FxaHGA02P13"(図1)および"EMFv104"は、単独の解析でそれぞれ73および71品種・系統を同定できる(表2)。
- 複数のマーカーを組み合わせることで、兄弟系統など近縁性の高い個体の判別も可能である(表3)。
成果の活用面・留意点
- これらのSSRマーカーは、これまでに報告されているイチゴ品種判別用マーカーとあわせて、育成者権の保護や遺伝資源管理に役立つものと期待される。
- 多型の検出には、オートシークエンサーを必要とするが、イチゴ品種判別用CAPSマーカー(野菜茶業研究所、2006年度研究成果情報)に比べ、より短時間での分析が可能である。
- 葉、がく、果肉など、様々な部位のサンプルに基づく分析が可能である。
- 増幅断片長や蛍光標識の違いを利用して、特に多型性の高い"FxaHGA02P13"と"EMFv104"など複数のマーカーを同時に泳動できる。
- 発表論文に記載した以外の実験条件(PCRやTaqポリメラーゼ、蛍光色素、オートシークエンサーの種類等)によっては、一部のピークがずれたり、消失・出現したりすることがある。異なる手法により得たデータを比較する場合には、共通品種を同時に解析するなどしてデータの照合を行うことが望ましい。
- 突然変異育種により育成された「アキタベリー」とその元品種である「盛岡16号」は、いずれのマーカーにおいても同一の遺伝子型を示し、判別できない。
具体的データ




(本城正憲)
その他
- 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
- 中課題番号:141f0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2008~2011年度
- 研究担当者:本城正憲、布目司、片岡園、矢野孝喜、山崎浩道、濱野恵、由比進、森下昌三
- 発表論文等:Honjo M. et al.(2011)Breed. Sci. 61:420-425