ハクサイ及びオレンジハクサイのカロテノイド組成と抗酸化能

要約

ハクサイの主要カロテノイドはβ-カロテン、ルテインであるのに対し、オレンジハクサイの主要カロテノイドはプロリコペン、β-カロテン、フィトエンである。総カロテノイド量、ポリフェノール量は通常のハクサイよりも多く、抗酸化能も強い。

  • キーワード:オレンジハクサイ、プロリコペン、カロテノイド、ポリフェノール、抗酸化能
  • 担当:食品機能性・機能性評価標準化技術
  • 代表連絡先:電話 019-643-3513
  • 研究所名:東北農業研究センター・生産基盤研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

植物色素の機能性解明研究が進んでおり、抗酸化物質であるβ-カロテンやリコペンなどのカロテノイド色素は、抗腫瘍性、発がん予防、免疫賦活能などを有することが報告されている。一方機能性に着目した特色ある野菜品種の開発が進んでおり、日本の主要野菜の一つであるハクサイも、結球内部がオレンジ色の品種が育成されている。そこで本研究では、ハクサイに含まれるカロテノイド色素の分析法を確立するとともに、ハクサイ及びオレンジハクサイの機能性解明を目的として、抗酸化成分であるカロテノイド色素の組成、ポリフェノール量及び抗酸化能を調査する。

成果の内容・特徴

  • ハクサイ(NC)及びオレンジハクサイ(OC)凍結乾燥物からのジクロロメタン-メタノール(2:1)、ジクロロメタン抽出物を合わせ、ケン化処理をすることでカロテノイド抽出物を得る。この抽出物をダイオードアレイ検出器、ODSカラムを接続したHPLC及びAPCIイオン化法を用いたLC-MS分析(可視光スペクトル及びマスクロマトグラム)により、ハクサイ及びオレンジハクサイに含まれるカロテノイド化合物の同定が可能である。
  • ハクサイの主要カロテノイドはβ-カロテン(λmax = 425、450、477 nm;m/z 537.4475(M+H)+;C40H57)、ルテイン(λmax = 420、443、472 nm;m/z 569.4387(M+H)+;C40H57O2)であるのに対し(図1A、図2A)、オレンジハクサイの主要カロテノイドはβ-カロテン、プロリコペン(シスリコペン)(λmax = 414、436、463 nm;m/z 537.4462(M+H)+;C40H57)及びフィトエン(λmax = 280 nm;m/z 545.5074(M+H)+; C40H65)であり、総カロテノイド量は、ハクサイよりも多い(図1B、図2A)。
  • オレンジハクサイ(ジクロロメタン)抽出物の2,2'-Azino-bis(3-ethylbenzothiazoline -6-sulfonic acid)(ABTS)-ラジカル捕捉活性は、ハクサイよりも高い(図2B)。
  • オレンジハクサイ(メタノール)抽出物の総ポリフェノール量(図2C)及びスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)様活性はハクサイよりも高い(図2D)。

成果の活用面・留意点

  • オレンジハクサイ及びハクサイを、機能性を有する食品素材として活用するための基礎的知見となる。
  • ハクサイ(品種、優黄)及びオレンジハクサイ(品種、オレンジクイン)は、2008年タキイ研究農場(滋賀県湖南市)で同一期間、同じ条件で栽培した平均的な重量の個体、各3個を使用している。

具体的データ

図1 ハクサイ(A)及びオレンジハクサイ(B)のクロマトグラム(450nm) P1、ルテイン;P2、β-カロテン、P3、プロリコペン
図2 オレンジハクサイ(OC)及びハクサイ(NC)のカロテノイド組成(A)、 ABTS-ラジカル捕捉活性(B)1)、総ポリフェノール量(C)、SOD様活性(D)2) 1)乾燥物0.1gからの抽出物使用、2)乾燥物2mgからの抽出物使用、***p<0.001

(渡辺 満)

その他

  • 中課題名:健康機能性に関する成分分析法及び評価法の開発と標準化
  • 中課題番号:310a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2011年度
  • 研究担当者:渡辺満
  • 発表論文等:Watanabe et al. (2011). LWT- Food Sci.Technol, 44(9):1971-1975