越冬性が優る無エルシン酸なたね新品種「キタノキラメキ」

要約

無エルシン酸なたね「キタノキラメキ」は、「キザキノナタネ」と比較し、北海道十勝地域で越冬株率が高く、やや多収である。

  • キーワード:なたね、多収、越冬性、無エルシン酸、食油用
  • 担当:ブランド農産物開発・資源作物品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 019-643-3655
  • 研究所名:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

北海道は、なたねの国内の主要産地で、道央の滝川市を中心に502haの作付けがある。今後は戸別所得補償、食料自給率向上等の諸施策により全道で作付けが拡大すると考えられる。しかし、食油用の奨励品種としては寒冷地向きの「キザキノナタネ」のみで、厳寒環境にある十勝地域では新たな品種の開発が待たれている。また、十勝地方では新規の製油事業者が参入し、菜種油原料の増産を図っている。越冬性が優り、やや多収の新品種導入により地域振興及び新たな需要拡大に貢献する。

成果の内容・特徴

  • 「キタノキラメキ」は、1996年東北農試盛岡試験地において、無エルシン酸で多収の「キザキノナタネ」を種子親に、米国より導入したダブルロー品種「Onyx」(ジーンバンクJP番号146926)を花粉親として交配、育成された、秋播きの食油用品種である。2010年、F14世代である。
  • 寒冷地において、「キタノキラメキ」は「キザキノナタネ」と比較して、開花期及び成熟期はやや遅く、草丈がやや高い。また、越冬株率が高く寒雪害被害程度は低いが(表1)、寒冷地での収量性はやや低い(表2)。子実中のグルコシノレートは、「キザキノナタネ」、「ななしきぶ」と同様に含み、ダブルローでなく無エルシン酸品種である(表2)。
  • 北海道十勝地域において、「キタノキラメキ」は「キザキノナタネ」と比較して、草丈がやや高く、越冬株率が高く、やや多収である。また、含油率も高い。菌核病罹病率が高い傾向にある(表3)。
  • 「キタノキラメキ」の子実及び油は、実需による成分分析結果により、「キザキノナタネ」と同様で、食油用として遜色のない品質である(表4)。

成果の活用面・留意点

  • 従来の「キザキノナタネ」との間で、降雨等による播種の遅れ、播き直し等の危険分散を図り、限定生産、地域振興及び実需のニーズに応えられる。限定生産対象地域は十勝地域であり、生産面積として100haを見込む。
  • 他のなたね品種、アブラナ科植物との交雑防止のため、隔離された採種圃場で種子を増殖する。一般栽培では、採種圃由来の無エルシン酸が保証された種子を使用する。
  • 「キザキノナタネ」の栽培法に準じ、「畑作地帯におけるなたねの導入法と栽培条件」(北海道 2010)を順守する。
  • 菌核病罹病指数は「キザキノナタネ」と同程度だが、罹病株率は高い傾向があり、 菌核病対策として、過度の密植及び多肥栽培を避け、輪作等の耕種的防除に努める。

具体的データ

表1 育成地の生産力試験及び系統適応性試験における生育調査結果(2005~2011)
表2 育成地の生産力試験及び系統適応性試験における収量調査結果(2005~2011)
表3 十勝農試における試験(2009~2010)及び現地試験(2010)の結果
表4 実需による子実及び油脂品質分析結果(2010年播種育成地産)

(本田裕、川崎光代)

その他

  • 中課題名:高付加価値を有する資源作物品種の育成と新規作物の評価・活用
  • 中課題番号:320d0
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:1996~2011年度
  • 研究担当者:本田裕、川崎光代、加藤晶子、由比真美子、山守誠、石田正彦、千葉一美、遠山知子
  • 発表論文等:品種登録出願