微細で低損傷デンプンの米粉ができるパン用水稲新品種候補系統「奥羽405号」

要約

「奥羽405号」は、東北地域中部では“早生の晩”に属する粳種である。米はアミロース含有率が低く、低グルテリン・26kDグロブリン欠失のタンパク質組成の特性を持つ。米粉は粒径が小さく、損傷デンプン量が少ないためパンの用途に適する。

  • キーワード:イネ、米粉パン、損傷デンプン、タンパク質変異、低アミロース
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話0187-66-2773
  • 研究所名:東北農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

現在、主食用米の需要は横ばいか穏やかな減少傾向にあり、食料自給率の向上の観点から、水田の高度利用、米粉利用による需要拡大が必要である。近年、製粉技術等の発達により米粉パンの製造販売が行われるようになるとともに、米粉パンに必要とされる品質特性も徐々に明らかになっている。そこで、米粉パンに適した特性を備えた米粉パン用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「奥羽405号」は、低アミロース米品種「たきたて」を母とし、低グルテリン・26kDグロブリン欠失米品種の「放育2号」(のちの「エルジーシー活」)を父とする交配組合せから育成された低アミロース・低グルテリン・26kDグロブリン欠失米系統である。
  • 湿式気流粉砕で製粉した米粉は「あきたこまち」や低アミロース米の「スノーパール」より粒径が小さく、損傷デンプン量が少ない。粒度分布は「あきたこまち」「スノーパール」と異なり、狭い範囲に分布している。小麦粉70%米粉30%グルテン添加の米粉混成パンは比容積がやや大きく、膨らみが優れる(図1)。
  • 敷島製パン株式会社において「奥羽405号」のロール製粉米粉を原料にした小麦粉70%米粉30%グルテン添加の米粉混成パンを製造し、試食した結果、「奥羽405号」の米粉パンは「あきたこまち」の米粉パン(湿式気流粉砕)と比較し、「やわらかく」「しっとり」「もっちり」して食味評価がよい(図2)。
  • 出穂期、成熟期は「あきたこまち」とほぼ同じで、“早生の晩”に属する(表1)。
  • 稈長・穂長は「あきたこまち」より短く、穂数は「あきたこまち」と同程度で、草型は“偏穂数型”である。玄米千粒重、精玄米重は「あきたこまち」と同程度である。耐倒伏性は“やや強”で、「あきたこまち」より明らかに強い(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pii ”と推定され、いもち病圃場抵抗性は、葉いもち“やや強”、穂いもち“中”である。障害型耐冷性は“弱”である(表1)。
  • 玄米は白濁し、品質は“中上”である。白米アミロース含有率は登熟温度により変動(3.3~11.6%)しやすい。玄米タンパク質含有率は「あきたこまち」より約1%高く、グルテリン・グロブリン含有率は「あきたこまち」より明らかに低い(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 米粉の粒径が小さく、損傷デンプン量が少ないため、パンの原料に利用できる。
  • 大手製パン会社で2014年から「奥羽405号」の米粉を使用したパンの商品化を予定している。
  • 栽培適応地域は「あきたこまち」熟期の作付け適応地域で、冷害の危険性の少ない東北中南部、北陸、関東以西である。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成および米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題番号:112a0
  • 予算区分:委託プロ(ブランドニッポン、加工プロ)、交付金
  • 研究期間:2002~2012年度
  • 研究担当者:太田久稔、福嶌陽、梶亮太、津田直人、山口誠之、中込弘二、片岡知守、遠藤貴司、横上晴郁、田村泰章