多収で極晩生の一季成り性イチゴ品種「豊雪姫」
要約
一季成り性のイチゴ品種「豊雪姫」は寒高冷地の無加温半促成栽培(低温カット栽培)および露地栽培に適しており、多収性で商品果率が高い。炭疽病に対して中程度から高い抵抗性、うどんこ病に中程度の抵抗性を有する。
- キーワード:一季成り性イチゴ、露地栽培、無加温半促成栽培、新品種
- 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発
- 代表連絡先:電話 019-643-3414
- 研究所名:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
寒高冷地の無加温半促成栽培(低温カット栽培)および露地栽培に適した既存品種「北の輝」は、硬度が高く日持ち性は高いが、そう果(種子)の浮き等の果実品質や収量に改良の余地があるため、これらに着目した一季成り性で優良なイチゴ品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「豊雪姫(とよゆきひめ)」は、2005年に盛岡32号(「北の輝」×「Chandler」)に「カレンベリー」を交雑した実生集団から選抜した一季成り性品種である。「北の輝」と比較すると、大果で果数が多く多収で商品果率が高く、寒高冷地の無加温半促成栽培(低温カット栽培)および露地栽培に適する(表1および図1)。
- 果形は円錐で果皮色は赤であり、揃いに優れる(表1および図2)。そう果の浮きや果実の割れ、空洞は少なく、果色の黒変は見られない。「北の輝」よりBrix.はやや低く、酸度はやや高く、食味はやや優れる。
- 炭疽病に対しては、発病度と枯死株率が「宝交早生」と同程度であり、中から高い抵抗性、うどんこ病に対しては「とよのか」より発病度が低く、中程度の抵抗性である(表2)。
成果の活用面・留意点
- 系統名はイチゴ盛岡35号である。
- 十分にランナーを発生させるためには、5°C以下の低温遭遇時間が1,000~1,200時間程度必要である(露地で越冬させた場合)。
- 露地栽培での開花開始は「北の輝」と同程度か遅く、極晩生である。
- 低温カット栽培における保温開始時期や低温遭遇量は「北の輝」に準ずる。「北の輝」より、低温にやや多く遭遇しても連続出蕾しやすい。
- 萎黄病には抵抗性を持たないため、発生地では土壌消毒が必要である。
- うどんこ病には中程度の抵抗性を示すが、地域によっては発病しやすいため防除に努める。
- 果実硬度が「北の輝」より低いため、適熟での収穫に努める。
具体的データ
その他
- 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
- 中課題番号:141f0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2005~2012年度
- 研究担当者:片岡園、由比進、本城正憲、岡本潔、森下昌三、矢野孝喜、濱野惠
- 発表論文等:片岡ら「豊雪姫」品種登録出願 2012年9月12日(第27084号)