トウモロコシ新品種「きみまる」は赤かび病抵抗性が強く、かび毒の濃度も低い

要約

飼料用トウモロコシの赤かび病抵抗性とフモニシン濃度には大きな品種間差がみられる。農研機構育成の新品種きみまる(北交72号)は、赤かび病抵抗性が強くフモニシン濃度が顕著に低い。また、他のかび毒に関しても高濃度に蓄積する特性はみられない。

  • キーワード:赤かび病、かび毒、サイレージ用トウモロコシ、フモニシン
  • 担当:家畜疾病防除・飼料等安全性確保技術
  • 代表連絡先:電話 019-643-3543
  • 研究所名:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

赤かび病に起因するかび毒は、家畜に対する重要な危害要因である。農林水産省ではいくつかのかび毒について配合飼料における基準値を定めているが、近年、酪農家のトウモロコシサイレージにこれらのかび毒が高頻度に検出され、基準値を超える検体が少なくないことが明らかになってきた。さらに北海道の根釧地域では、当該地域で広く栽培されていた1品種で特に濃度が高かったことから、その販売が中止される事態にも至っている。「きみまる」は東北地域を対象に農研機構が育成したサイレージ用トウモロコシの新品種であるが、品種育成の過程では赤かび病抵抗性やかび毒蓄積特性が十分に評価されていないため、普及に先立ちこれらの特性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 市販品種の中には、東北地域の気象条件下で赤かび病を発病しやすい品種と発病しにくい品種が混在する(表1)。
  • 赤かび病を発病しやすい品種の中には、品種Aのようにフモニシン(FUM)(図1、2)、デオキシニバレノール(DON)(図3左)、ニバレノール(NIV)(図3中)、ゼアラレノン(ZEA)(図3右)の主要かび毒のすべてを蓄積しやすい品種が存在する。
  • 農研機構が育成した新品種「きみまる」(系統名:北交72号)の赤かび病の発病率は多くの市販品種と比べて低い(表1)。
  • 「きみまる」はFUM濃度がきわめて低く(図1、2)、発病率(表1)に関しては「きみまる」と大差のない品種Dと比べても、そのFUM濃度はさらに低い(図1、2)。
  • 「きみまる」の赤かび病抵抗性の強さとフモニシン濃度の低さは、東北地域内の広範な栽培地および多様な播種期において再現される(表1、図1、2)。
  • かび毒のうちDON、NIVおよびZEAに関しては、「きみまる」の有利性は明確ではないが、少なくともこれらのかび毒を高濃度に蓄積する特性はない(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 品種選定を行う上での参考となる。
  • きみまるの種子は2015年に販売開始予定。
  • 飼料安全法に基づく牛用飼料におけるDONとZEAの基準はそれぞれ4mg/kg(ただし、3ヶ月齢以下は1 mg/kg)および1 mg/kgであるが、FUMとNIVの基準値は設定されていない。

具体的データ

 表1、図1~3

その他

  • 中課題名:飼料等の家畜飼養環境の安全性確保技術の開発
  • 中課題番号:170d1
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:魚住順、芦田倫子(青森畜研)、尾張利行(岩手農研)、佐藤寛子(秋田畜試)、荒木利幸(宮城畜試)、石山 徹(山形畜試)、松澤保(福島畜研)、嶝野英子、出口新、内野宙
  • 発表論文等:魚住ら(2013)日草誌、60:(印刷中)