野菜7品目のポット栽培試験のデータを線形混合モデルにより解析すると、栽培土壌のカドミウム濃度低下と比べて土壌pH上昇による可食部カドミウム濃度低減効果の方が品目間差異は大きい。土壌pH上昇による低減効果はキャベツで比較的高く、ニンジンで低い。
野菜の可食部のカドミウム(Cd)濃度低減においては土壌pHの上昇や土壌中Cd濃度の低下が有効と考えられるが、これらに関する報告は少なく、対策技術は確立していない。野菜の可食部Cd濃度低減技術を開発するためには、各品目について土壌pHと土壌中Cd濃度が可食部Cd濃度に与える影響を把握することが必要である。そこで、各土壌において土壌pHを数段階にして得られるデータを解析可能な線形混合モデルを用いて野菜7品目(エダマメ、チンゲンサイ、レタス、ニンジン、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー)の可食部Cd濃度を推定し、各品目の土壌pH上昇と土壌中Cd濃度低下による低減効果を比較する。
1) | 現地圃場から採取したCd濃度0.1~4.0 mg kg-1の土壌9点(エダマメのみ11点)を土壌pHが2~3段階となるよう調整したポット栽培試験に供試し(表1)、得られた野菜の可食部Cd濃度、0.1 mol L-1塩酸浸出による土壌中Cd濃度、土壌pHを線形混合モデル(式1)に当てはめる。 |
式1 | og([可食部Cd濃度]i, j) = 切片 + a([0.1 mol L-1 塩酸浸出Cd濃度]i -0.21)+ b ([栽培後の土壌pH]i, j -6.1) + [各土壌のランダム切片]i + [残差]i, j |
注1) | 添え字のi、jは土壌iのj番目の値、a、bは0.1 mol L-1塩酸浸出Cd濃度と土壌pHの係数 |
注2) | ランダム要因に各供試土壌を指定し、各土壌の傾きが一定で切片が異なるランダム切片モデル。切片を日本の畑土壌の平均値(0.1 mol L-1塩酸浸出Cd濃度0.21 mg kg-1、土壌pH 6.1)に設定した。 |
2) | 野菜各品目について式1の切片、a、bより土壌pHと土壌中Cd濃度による可食部Cd濃度推定値の等値線図を作成する(図1)。 |