国産ナタネ油の約5%はバイオ燃料製造を兼営する地場搾油である

要約

ナタネ市場は生産・搾油とも寡占状態にあるが、2003年以降、地場搾油と廃食用油回収・バイオディーゼル製造を兼営する小規模搾油所が増加しており、これらは国産ナタネ油生産全体の約5%を占めている。

  • キーワード:国産ナタネ、ナタネ油、地場搾油、バイオディーゼル
  • 担当:バイオマス利用・地域バイオマス利用
  • 代表連絡先:電話 019-643-3494
  • 研究所名:東北農業研究センター・生産基盤研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2003年以降、燃料化を視野に入れたナタネの地場搾油に取り組む地域が増えている。ナタネ生産は、油糧作物の自給率向上として期待されるが、統計調査が一時期途切れるなど、生産の実態把握がなされていない。そこで、全国調査を通じて国産ナタネの栽培・搾油の現状を明らかにし、燃料化を視野に入れた地場搾油の動向およびシェアを把握する。

成果の内容・特徴

  • 2008年産ナタネの1,168tが市場経由で流通し、143tが搾油所への直接販売、185tが委託加工であった。この国産ナタネの49%(736t)は北海道産、27%(411t)は青森県産であり、両者で77%(市場を経由する国産ナタネの98%)を占める(表1)。また、搾油は上位2社が全体の69%を占めており(図1)、ナタネ市場は生産・搾油とも寡占状態にある。
  • 上位2社以外の国産ナタネの搾油所は、小規模な個人経営の搾油所(以下、家内工業型)と地域のナタネを地場搾油するために市町村等が設立する搾油所(以下、コミュニティ型)である。ただし、家内工業型の過半は家族労働力のみで、後継者がいないケースが多いため、今後減少すると予測される(表2)。
  • 2003年以降、コミュニティ型の設立が相次いでいる(表2)。ほとんどのコミュニティ型は地域内の食用油生産から燃料利用までのサイクルを作ることを設立目的の一つとし、実際に地域で回収した廃食用油からバイオディーゼルを製造している。その食用油加工量は2008年では国産ナタネ油の5%(図1)、上位2社以外の小規模搾油の17%のシェアとなっており、国産ナタネ油加工を担う類型となっている。
  • コミュニティ型のバイオディーゼル製造は、地域で回収された市販植物油を主な原料とするが、ナタネ油製造工程で排出される非可食部の油や、町内事業所での国産ナタネ油の利用・回収による国産ナタネを原料とする燃料製造が進められている。雫石町の例では地場産ナタネ油の約1割がバイオディーゼルに変換され、全バイオディーゼル製造量の約5%を占めている(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 国産ナタネ振興、農村におけるバイオ燃料普及上基礎的な知見となる。
  • 2008年産ナタネの数量は高品質なたね産地確立対策事業資料と、現地調査で得たデータを検証・集計した値であり、国産ナタネを通年搾油する全搾油所を網羅する。

具体的データ

 表1~2、図1~2

その他

  • 中課題名:地域資源を活用したバイオマス循環利用システムの開発
  • 中課題番号:220e0
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:野中章久、小野洋
  • 発表論文等:野中(2013)東北農業研究叢書,(8) 321