暖地に適した無エルシン酸なたね新品種候補「ななはるか」

要約

なたね「ななはるか」は成熟期が早い無エルシン酸系統である。九州南部地域において「ななしきぶ」より成熟期が4日早く、梅雨入り前に収穫可能である。また、圧搾油の食味がやや優れる。

  • キーワード:なたね、暖地向き、無エルシン酸、良食味
  • 担当:ブランド農産物開発・資源作物品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 019-643-3655
  • 研究所名:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

九州地域における2012年産なたねの作付面積は283haで、全国の18%をしめている。栄養学的な観点から、なたね油には無エルシン酸品種が望まれているが、暖地に適した品種が無いために、温暖地向き品種「ななしきぶ」を作付せざるを得ない状況にある。しかし、「ななしきぶ」は成熟期が遅いために、暖地では収穫期が梅雨にあたり、穂発芽による子実品質の低下が生じることが多く、搾油業者にとって深刻な問題となっている。また、降雨によって生じる収穫作業の遅れにより、後作との作業競合が発生している。これらの問題を解決すべく、「ななしきぶ」より成熟期が早い無エルシン酸なたね品種の開発を行った。

成果の内容・特徴

  • なたね「ななはるか」は、1995年東北農業試験場(現 東北農業研究センター)において、早生で多収のエルシン酸含有品種「チサヤナタネ」を種子親に、中生で耐倒伏性に優れる無エルシン酸系統「盛脂148」を花粉親として交配、系統育種法により育成した。
  • 育成地において、「ななはるか」は温暖地向きの「ななしきぶ」および寒冷地向きの「キザキノナタネ」と比較して成熟期が早い(表1)。「ななしきぶ」より越冬性はやや劣り低収である。子実はエルシン酸を含まず、容積重がやや大きく、外観品質は同程度である。
  • 鹿児島県内において、「ななはるか」は「ななしきぶ」と比較して成熟期が4日早い(表2)。やや低収であるが、子実は含油率がやや高く、容積重がやや大きい。東串良町における収油量は同程度である。
  • 実需者および育成地における食味評価では、「ななはるか」の圧搾油は「ななしきぶ」と比較し、やや優れた品質である(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培適地は九州南部地域であり、普及面積は鹿児島県内に30haを見込む。九州地域における子実品質の安定化と作付面積の拡大が期待できる。また、圧搾油の食味評価がやや高く、地域産業に貢献する製品開発が見込まれる。
  • 他のなたね品種、アブラナ科植物との交雑防止のため、隔離された採種圃場で種子を増殖する。一般栽培では、採種圃由来の無エルシン酸が保証された種子を使用する。
  • 育成地での菌核病発生程度は「ななしきぶ」よりやや高い傾向があり、菌核病対策として、過度の密植及び多肥栽培を避け、輪作等の耕種的防除に努める。

具体的データ

表1~3

その他

  • 中課題名:高付加価値を有する資源作物品種の育成と新規作物の評価・利用
  • 中課題番号:320d0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(水田底力、新用途畑作物、転作作物)
  • 研究期間:1995~2012年度
  • 研究担当者:川崎光代、本田裕、加藤晶子、山守誠、由比真美子、石田正彦、千葉一美、遠山知子、手塚隆久
  • 発表論文等:品種登録出願候補