既耕作水田における水による土壌攪拌・除去技術の除染効果

要約

水による土壌攪拌・除去技術によって土壌中の粘土を排出すると空間線量率を30%、土壌中放射性セシウム濃度を60%低減可能で、玄米中放射性セシウム濃度も低減するが、減収する。土壌改良資材(ゼオライト)施用により低減効果が高まり、減収は抑制される。

  • キーワード:水田の除染、空間線量率、放射性セシウム、水稲、移行低減
  • 担当:放射能対策技術・移行低減
  • 代表連絡先:電話 024-593-6176
  • 研究所名:東北農業研究センター・農業放射線研究センター
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

現在、環境省の除染対策事業において、農地の除染のうち、すでに耕作されている耕地については、反転耕や深耕による除染のみが助成の対象となっている。現地には作土層が薄い、礫が作土層直下に多いなど、反転耕や深耕の適用が困難な耕地も多い。そこですでに耕作された水田、特に、棚田など小規模な水田を対象として、水による土壌攪拌・除去技術の効果を実証する。さらに、この除染法では土壌中の粘土を除去するため、生産力低下への対策が必要であり、土壌改良資材(ゼオライト)を施用し、水稲収量や玄米中放射性セシウム濃度への影響を確認する。

成果の内容・特徴

  • 水による土壌撹拌・除去による除染は次の工程からなる。畦畔から水が漏れないようにした水田に、水深15cm程度に入水する。田面水のpHが8~9となるように水酸化ナトリウムを加え、攪拌(代かき)を行い、土塊を細かくして、放射性セシウムが吸着している粘土を分散させる(写真1)。撹拌後、直ちに水田表面の土壌懸濁水をポンプで沈殿漕に排出、貯留する(写真2、3)。沈殿槽に高分子凝集剤を添加して粘土粒子を沈殿させ、フィルタープレスや膜ろ過袋を用いて沈殿物から水分を除去し、粘土粒子を回収する(写真4、5)。この工程を合計4回くり返し、30 t/10a、3~4 cm厚相当の土壌を除去した。除去された粘土はフレコンに収納し処理する。
  • 除染により、地上1 mの空間線量率は、除染前の1.77 µSv/hから1.24 µSv/hに30%低減した(図1左)。土壌中(0~15 cm)の放射性セシウム(Cs-137)濃度は、 3,060 Bq/kgから1,170 Bq/kgに62%低減した(図1右)。
  • 除染後、塩化第二鉄で作土のpHを6程度に戻した後、水稲栽培を行うと、玄米中の放射性セシウム濃度は、除染を行わず慣行施肥で栽培した場合(対照)の40 Bq/kgと比較して、58%低減の17 Bq/kgとなった(図2右)。ただし、玄米収量は対照と比較して15%の減収(目標収量600 kg/10aと比べて10%減収)になった(図2左)。
  • 除染後に土壌改良資材(ゼオライト)を1 t/10a施用すると、交換性カリが増加し、玄米中放射性セシウム濃度は80%低減して8.2 Bq/kgとなった(図2右)。玄米収量は対照の慣行施肥栽培の7%減収(目標収量600 kg/10aと比べて2%減収)に留まり(図2左)、収量回復と放射性セシウムの移行低減に効果が認められる。

成果の活用面・留意点

  • すでに耕作された水田や下層に礫が出現して反転耕や深耕による除染ができない小規模な水田において、空間線量率を低減し、放射性セシウムの玄米への移行を低減する技術となる。
  • 粘土含量が比較的多い粘質な灰色低地土において、窒素・リン酸・カリをいずれも10kg/10a施用して、7月2日に「まいひめ」を移植栽培した結果である。砂質な場合は代かき回数や土壌改良資材の量を加減する必要がある。
  • 粘土から分離除去された水の放射性セシウム濃度は検出限界(1Bq/L)以下となる。
  • 除染後の地上1 mの空間線量率は、1 aを除染後、除染前測定時と同じ土壌水分程度に乾燥後測定した。必要な水酸化ナトリウムと塩化第二鉄は10 aあたり、それぞれ、400 kgと100 kgであった。

具体的データ

写真1、図1~2

その他

  • 中課題名:農作物等における放射性物質の移行動態の解明と移行制御技術の開発
  • 中課題番号:510b0
  • 予算区分:委託プロ(放射能プロ)
  • 研究期間:2012年度
  • 研究担当者:太田 健、牧野知之(農環研)、赤羽幾子(農環研)、山口紀子(農環研)、藤原英司(農環研)、木方展治(農環研)、山口 弘(農環研)、荒 貴裕(農環研)、石川哲也、江口哲也、村上敏文、小林浩幸、高野博幸(太平洋セメント)、神谷 隆(太平洋セメント)、齋藤 隆(福島農総セ)