いもち病に強く耐倒伏性に優れる水稲新品種候補系統「奥羽糯413号」

要約

「奥羽糯413号」は、東北地域中部では"中生"に属する糯種である。いもち病圃場抵抗性は、葉いもち、穂いもちともに"強"である。耐倒伏性は強く、精玄米重は「きぬのはだ」並である。搗き餅の食味は良好で、餅硬化速度は「きぬのはだ」より遅い。

  • キーワード:イネ、糯、いもち病抵抗性、耐倒伏性、良食味
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 029-838-8536
  • 研究所名:東北農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

米の消費量が減少する中で、国産米への安心感等の理由から米菓の原料としての加工用糯米の需要は安定している。また、転作作物として加工用糯米に取り組む産地も増加している。加工用米については契約数量を確保する必要があるため、産地からは収量を安定させるために病虫害や倒伏等に強い糯米品種が求められている。そこで、栽培特性の優れる糯品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「奥羽糯413号」は、2004年に、良質・糯の「奥羽糯391号」を母とし、直播用・良食味の「奥羽直376号」を父として行った交配から育成された系統である。
  • 育成地における出穂期、成熟期は「きぬのはだ」並で、"中生"に属する(表1)。
  • 稈長は「きぬのはだ」よりやや短く、穂長は同程度、穂数はやや多く、草型は"偏穂数型"である。ふ先色は"褐"である(表1)。
  • .耐倒伏性は"強"で、移植栽培、直播栽培いずれにおいても倒伏程度は小さい。また、普及見込み地域である秋田県南秋田郡大潟村では、明らかに「きぬのはだ」より倒伏が少ない(表1、図1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型は"PiaPiiPik"と推定される。いもち病圃場抵抗性は、葉いもち、穂いもちともに"強"である。障害型耐冷性は"やや強"である。穂発芽性は"中"である(表1)。
  • 移植栽培、直播栽培いずれにおいても精玄米重は「きぬのはだ」と同程度である(表1)。大潟村での精玄米重は「きぬのはだ」より多収である(表1)。
  • 外観品質は「きぬのはだ」並の"上下"である(表1)。搗き餅の食味は「きぬのはだ」「ヒメノモチ」より優る良食味である(表1)。餅硬化速度は「きぬのはだ」「ヒメノモチ」より遅い(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 秋田県の大潟村農業協同組合で、米菓の原料米および主食用として「きぬのはだ」の一部に替えて作付けを予定している。2016年の普及見込み面積は500haである。
  • 栽培適地は東北地域中南部である。いもち病抵抗性および耐倒伏性が強いため、直播での低コスト栽培にも適する。

具体的データ

表1、図1

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題整理番号:112a0
  • 予算区分:委託プロ(加工プロ)、交付金
  • 研究期間:2004~2013年度
  • 研究担当者:梶亮太、太田久稔、福嶌陽、津田直人、山口誠之、中込弘二、片岡知守、遠藤貴司、田村泰章