籾がら焼却灰は市販のケイ酸資材と同等のイネいもち病発病抑制効果を有する

要約

水稲の有機栽培において、低温燃焼によって可溶性ケイ酸含量を高めた籾がら焼却灰の施用により、ケイカルなどのケイ酸資材を施用した場合と同等のイネいもち病発病抑制効果が得られる。

  • キーワード:籾がら焼却灰、イネ、有機栽培、いもち病、ケイ酸資材
  • 担当:環境保全型農業システム・有機農業体系
  • 代表連絡先:電話 029-838-8522
  • 研究所名:東北農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

化学合成した薬剤や肥料を施用しない水稲の有機栽培では、病害虫に対する耐性向上などの目的で、有機JAS規格に適合するケイ酸資材(ケイカルやようりんなど)を利用する場合がある。しかし、未利用資源の有効利用の観点などから有機農業生産者の中には、鉄鋼スラグ由来のケイカル(可溶性ケイ酸30%)や、燐鉱石と苦土・ケイ酸含有鉱さいなどから作られるようりん(可溶性ケイ酸約20%)だけでなく、籾がらに含まれるケイ酸の有効利用を期待する声がある。そこで、籾由来でケイ酸資材として活用が見込まれる籾がら焼却灰に着目し、そのイネいもち病発病抑制効果を検証し、有用性を評価する。

成果の内容・特徴

  • 低温燃焼により作製された籾がら焼却灰15g/potを水稲移植前の土壌に施用することにより、ケイ酸資材無施用に比べて水稲の葉いもち病斑数が有意に低下する。発病抑制効果は、ケイカルなど他のケイ酸資材を施用した場合と同等である(図1)。
  • 葉いもち試験各区の稲体ケイ酸含量には、シリカゲル以外で有意差はなかったが、葉いもち病斑数は、稲体ケイ酸含量が高い試験区ほど小さい傾向にある(図1、2)。
  • 穂首分化期頃に籾がら焼却灰を土壌表面に施用することにより、穂いもち被害度はケイ酸質資材無施用やケイ酸塩白土施用に比べて有意に低下し、ケイカルを施用した場合と同等である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 水稲の有機栽培等において、ケイ酸質資材の利用によるいもち病軽減技術としての活用が期待できる。
  • 本試験で使用した籾がら焼却灰の製法・施用量は伊藤ら(2004年度普及成果情報)に準拠している。籾がら焼却灰は、900°C以上の高温に遭遇すると熔融・固化するほか、ケイ酸成分が不溶化するのでケイ酸資材としての価値はなくなってしまう。本試験で用いた籾がら焼却灰は、低温(400-500°C)で燃焼させることにより非晶質で溶解性の高いケイ酸を含んでいる。
  • 実用化に向けては、資材施用法や資材のペレット化について検討する必要がある。
  • シリカゲルはJAS有機規格に適合しない。またケイ酸塩白土は土壌改良資材であり、ケイ酸質肥料として登録はない。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:有機農業の成立条件の科学的解明と栽培技術の体系化
  • 中課題整理番号:153b0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動)
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:兼松誠司、小林隆、関矢博幸
  • 発表論文等:小林ら、北日本病虫研報63:22-26.