高純度セラミドの連続分取技術

要約

保湿成分等として活用される機能性素材のセラミドは夾雑物分離が困難なため市場には低純度品しかないが、工業用分離技術の擬似移動層クロマトグラフィーを適用することにより、純度90%以上のセラミドを高効率に連続製造することができる。

  • キーワード:セラミド、米残渣、バイオマス、分離技術、擬似移動層クロマトグラフィー
  • 担当:バイオマス利用・地域バイオマス利用
  • 代表連絡先:電話 029-838-7507
  • 研究所名:東北農業研究センター・生産基盤研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

セレブロシドは一般にセラミドの名称で知られ、表皮の角質層に存在する細胞間脂質の主成分である。保湿効果やアトピー性皮膚炎などの治癒効果を有することが知られており、化粧品、食品への利用に加えて、医薬品、特定保健用食品などへの展開が期待されている。セラミドの原料は米ぬかなど植物由来のものが主となっている。物理的な性質の近い夾雑物が存在することから高純度化が困難であるため、現在は5%程度の低純度のものが市場を形成している。しかしながら、低純度製品には混在夾雑物に由来する色や臭いなどがあることから、高純度品の市場ニーズは高いと考えられる。そこで、セラミド製品を工業的クロマト分離技術である擬似移動層クロマト分離技術を活用することにより、連続的に純度90%以上のセラミド製品を製造することを目的とする。さらにセラミドの分子種毎の連続分取を目指す。

成果の内容・特徴

  • 現在市場で製造される従来製品(セラミドとして約5~10%含有)をセラミド分離原料に利用する(図1)。カラムを4本使用する擬似移動層クロマトグラフィーを適用することで、セラミドと夾雑物との連続分離が可能である(図2)。
  • 分離吸着剤としてオクタデシルシリル(ODS)シリカゲルを使用することにより、セラミドと夾雑する糖ステロールが良好に分離できる(図3)。2成分分離モードの場合、純度は90%以上、回収率は95%以上である(図3、4)。
  • 分離に使用する溶媒はエタノールと水の混合溶媒であることから、得られるセラミドは食品への利用が可能である(図3)。
  • 3成分分離モードを適用した場合は、フラクションコレクターを接続し分取することにより、セラミドの分子種毎の分離と100%近い高純度化が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 2成分分離モードの場合は分画されたセラミド画分中に非セラミド物質(図3、4中ピークX)が存在するため、米由来の原料油から得られるセラミドの純度は90%程度となる(図3、4)。
  • 本分離技術は最適分離条件が定まれば、容易に工業レベルへのスケールアップが可能であるため、食品、化粧品などの分野での需要に応じた活用が期待される。
  • 3成分分離モードで使用する3成分分離方式擬似移動層クロマトグラフィーはオルガノ株式会社の特許であるため、本モードを用いたセラミド製造の実施にあたってはオルガノ社の許諾が必要である。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:地域資源を活用したバイオマス循環利用システムの開発
  • 中課題整理番号:220e0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:木村俊之、佐藤康平(オルガノ)、間和彦(日本製粉)
  • 発表論文等:木村ら(高純度セレブロシドの製造方法)特願2013-103928