水稲の無コーティング種子代かき同時浅層土中播種技術

要約

水稲の催芽種子を代かきと同時に浅層土中に散播することにより、無コーティングでも十分な苗立率が得られる。播種作業は一人で可能であり、播種時間は30aが約1時間である。全刈収量は同地域の鉄コーティング直播や市町村別収量と同程度である。

  • キーワード:水稲、浅層土中播種、湛水直播、無コーティング
  • 担当:新世代水田輪作・高能率水田輪作
  • 代表連絡先:電話019-643-3535
  • 研究所名:東北農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

農業の高齢化と担い手農家の大規模化により、水稲の湛水直播栽培面積が増加している。現在の湛水直播栽培は、鉄や過酸化石灰資材の種子コーティングを行う技術が中心である。種子コーティングは苗立の安定化に効果があるものの、逆にコーティング不良が苗立不良の原因になる事例も見られる。また、種子コーティングには機械や資材、手間が必要である。そこで、種子コーティングを省略したより省力・低コストで取り組みやすい湛水直播栽培技術を開発し、実用性を現地圃場で実証する。

成果の内容・特徴

  • 播種機は代かき用ハロー(2.2?2.4m)、速度連動播種ユニット、マーカー、種子拡散板、鎮圧ローラーで構成される播種機を利用し(図1)、仕上げ代かき-土壌表面散播-鎮圧を1工程で行う。代かき直後の土壌表面を軽量の塩ビパイプ製のローラーで撫でるように自重のみで鎮圧するので、種子は土壌表層5mm以内の位置に置かれる(表2)。
  • 播種量は乾燥種子換算で5?6kg/10aとする(表1)。鳩胸状態の催芽種子を脱水して用いる。
  • 荒代かきをした水田で、水面割合が30?50%になるまで落水して、マーカー跡が見える状態で播種する。一人作業で30aの水田を1時間で播種できる(表1)。
  • 播種後10日間以上落水管理すると、苗立率は約60%になる(表2)。
  • 現地実証試験の全刈収量は平均609kg/10aで、「萌えみのり」では鉄コーティング直播と同程度であり、「はえぬき」では同地域の移植栽培が主である市町村別収量と同程度である。検査等級は1等である(表2)。
  • 水持ちと排水性がよく、給排水が自由にでき、高低差の少ない水田に適する。

普及のための参考情報

  • 普及対象:水稲栽培農業者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北地域の湛水直播適地に1,000ha
  • 2016年は試作機7台で作業要望に対応し、2017年に播種機が市販される予定。
  • 詳しい技術マニュアルを農研機構東北農業研究センターのホームページに掲載予定。
  • 播種深度が浅く転び型倒伏の懸念がある。倒伏しやすい品種での検討は不十分なことから,「はえぬき」や「萌えみのり」といった倒伏に強い品種を用いる。
  • 出芽後湛水して、直播水稲表面播種にて実用性が確認された除草剤(http://www.japr.or.jp/gijyutu/014.html)を施用するとともに、その後発生する草種に応じた中後期除草剤を施用する。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:作業の高速化による高能率低投入水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:111b1
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:白土宏之、安藤正(山形農総研水田農試)、浅野目謙之(山形農総研)、松田晃、川名義明、片平光彦(山形大農)、小野洋、菅原金一(石井製作所)、伊藤景子、大平陽一、山口弘道
  • 発表論文等:
    1)白土ら(2015)日作紀、84(4):426-431
    2)白土ら(2016)日作紀、85(2):178-187
    3)白土ら(2016)「水稲無コーティング種子の代かき同時浅層土中播種栽培マニュアル(ver.1)