プラウ耕・グレーンドリル播種による稲-麦-大豆の2年3作輪作体系

要約

耕起にスタブルカルチ、播種にグレーンドリルを用いる本体系を仙台平野津波被災圃場で実証した平均収量は、水稲乾田直播533kg/10a、小麦403kg/10a、狭畦密植大豆226kg/10aであり、60kg当たり費用合計は東北平均のそれぞれ57%、46%、72%に低減する。

  • キーワード:プラウ耕、グレーンドリル、稲麦大豆2年3作、大区画圃場、震災復興
  • 担当:新世代水田輪作・高能率水田輪作
  • 代表連絡先:電話019-643-3535
  • 研究所名:東北農業研究センター・生産基盤研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

東日本大震災から復興し、食料生産地域を再生するために、コスト競争力のある農業の発展が期待されている。仙台平野津波被災水田において2~3ha規模の大区画水田を造成し、プラウ耕・グレーンドリル乾田直播の播種体系を、麦、大豆にも適用した2年3作体系を導入し、安定多収技術を現地実証し、コスト低減効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 水稲乾田直播-小麦-狭畦密植大豆による2年3作の輪作体系において、耕起作業と播種作業にそれぞれスタブルカルチ(チゼルプラウ)およびグレーンドリルを用いることで速度10km/h以上の高速播種による高能率な輪作作業体系が構築できる(図1)。
  • 乾田直播の播種後の鎮圧に通常使用するケンブリッジローラは、ヘラ状のタイン(クラッカーボード)を装着することで播種床造成に利用できる。クラッカーボードを土壌に作用させることで、荒起こしされた土壌表面の凹凸を均す機能があり、ケンブリッジローラで鎮圧・砕土して高能率な播種床造成が可能である(図1)。
  • グレーンドリルは、種子ホッパのシャッタを1条おき、2条おきに閉めることで、大豆狭畦密植栽培の播種に利用できる(表)。水稲乾田直播で、耐倒伏性の高い直播適性品種を用いる場合、12~15cmの狭い条間で高収量が得られる(データ略)。
  • 名取市の津波被災水田(30a区画)を営農機械で合筆造成した3.4ha圃場(長辺300m、10枚合筆)と2.2ha圃場(長辺170m、6枚合筆)を用いた3年間の実証試験の平均収量は、乾田直播533kg/10a、小麦403kg/10a、大豆226kg/10aである(表)。
  • 実証試験の結果、水稲60kg当たりの費用合計は6,903円、小麦は7,431円、大豆14,711円で、2010年東北平均に対し、それぞれ57%、46%、72%に低減する。削減効果が大きいのは労働費であり、2010年東北平均に対し、それぞれ22%、18%、19%である(図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:稲、麦、大豆の2年3作を行う大規模水田作経営
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北太平洋側南部で400ha
  • その他:
    1)水稲後の麦、大豆の播種作業では、枕地はトラクタの旋回で土壌が硬く締まりやすいので、別途パワーハローで砕土して播種するか、パワーハローとグレーンドリルを合体させたコンビネーション播種が望ましい。
    2)除草体系、施肥体系、防除体系は、地域の栽培基準に準ずる。また、水稲乾田直播の耕起前に堆肥投入が望ましい。
    3)生産コストは経営面積などの条件で異なる。「乾田直播栽培マニュアルVer.3」はホームページからダウンロードできる。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:作業の高速化による高能率低投入水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:111b1
  • 予算区分:その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2012~2015年度
  • 研究担当者:大谷隆二、齋藤秀文、関矢博幸、冠秀昭、中山壮一、松波寿典、池永幸子、 宮路広武、篠遠善哉、谷口義則、氷見英子、長坂善偵
  • 発表論文等:
    1)農研機構(2016)「乾田直播栽培マニュアル Ver.3
    2)大谷(2015)日本土壌肥学雑誌、86(1):42-47