アブ防除用折りたたみ式新型トラップ

要約

開発したアブ防除用新型トラップは折りたたみ可能で運搬・保管性に優れ、ホームセンターで購入可能な資材を用いて1個数千円で自作できる。このトラップは炭酸ガスを使わずに、牛の背中側から吸血する種類も含め多くの種類に対して高い捕獲能力を持つ。

  • キーワード:アブ、トラップ、防除、自作
  • 担当:自給飼料生産・利用・寒冷地肉用牛飼養
  • 代表連絡先:019-643-3541
  • 研究所名:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年牛白血病の感染拡大などにより、牧野でのアブ防除が求められているが、牧野で有効なアブ防除法はトラップによる捕殺だけである。牧野では費用・労力の面で炭酸ガスの使用が困難ため、炭酸ガスを使用せずに高い捕獲力を持つ安価なトラップが求められている。これまで直方体の黒色誘引体自体を捕虫部とした視覚的効果だけでアブを誘引し安価に自作できるボックストラップの設置により、牛へのアブ飛来数や、牛白血病の陽転率を大幅に低減した例(吉田ら、一酪農場の牛白血病清浄化対策、平成24年度日本獣医師会獣医学術学会年次大会講演要旨集p85)がある。しかし、ボックストラップは設置時の運搬労力や保管場所確保の問題があるうえ、構造上アカウシアブ等の背中側から吸血する種を捕獲できない。そこで安価に自作でき炭酸ガスを使用せず視覚効果だけでアブを誘引し背中側から吸血する種を含め全ての種を捕獲でき、運搬や保管が容易なトラップを開発する。

成果の内容・特徴

  • 新型トラップ(図1左)(トラップ本体寸法90cm×90cm×80cm、トラップ下端の地上高60~70cm)は、四角錐台を基本とした形状の黒色誘引体(図2)の上側に捕虫部を配置することにより、炭酸ガスを使用せずに牛からの吸血部位が背中側、腹側どちらの種類のアブも捕獲できる(図3)。支柱にはビニールハウス用の直径19mmの直管パイプを用い、パイプの接合もビニールハウス用のTバンドとフックバンドを用いる。シートを含めホームセンターで入手可能な素材で自作でき、1個あたりの材料費は数千円である。自作用の図面及び設置時の説明書はURL:https://www.naro.affrc.go.jp/tarc/contents/special/index.html からダウンロードできる。
  • トラップの素材をシートにすることで折り畳むことができ(図1右)重量が支柱を含めて6~7kgなので、牧野への搬送、運搬車の入りにくい設置場所への人力による運搬も楽に行え、使用しない期間は狭い場所でも保管が可能になる。
  • 牧野に設置すると多くの種類に対してボックストラップと同等以上の捕獲能力を有し、アカウシアブ等の背中側から吸血する種に高い捕獲能力を示す。その他の大・中型種に対しても、ボックストラップより高い捕獲能力を持つ(表1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:公共牧野等の牧場、広いパドックを持っている農家
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:日本全国
  • その他:本トラップは自作可能であるが、自作が困難な場合は、シート加工業者に作製を依頼する。対応可能な業者は日本草地畜産種子協会が紹介を行っている。本トラップはシート製なため、トラップ作製時や設置時の歪みによって捕集部入り口が大きく開くと、小・中型種では捕獲能力が大幅に低下するものがある。また、動物の加害による破損の可能性があるため、防護柵を必ず設定する必要がある。本トラップは持ち運びが容易で多くの種類のアブを捕獲できるので、調査用としても有効である。

具体的データ

図1~3,表1

その他

  • 中課題名:寒冷積雪地帯での土地資源と自給飼料を活用した肉用牛飼養技術の開発
  • 中課題整理番号:120d2
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:白石昭彦
  • 発表論文等:農研機構(2015)「折りたたみ式アブ防除用トラップ」 https://www.naro.affrc.go.jp/tarc/contents/special/index.html (2016年2月3日)