暗黒低温処理イチゴ苗の赤色光照射による新葉の徒長防止効果
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要約
イチゴ栽培における花芽分化促進法として有効な暗黒低温処理に際し、新葉の徒長・黄化防止に赤色光照射が著しい効果を有し、花房の発育抑制はない。
- 担当:野菜・茶業試験場 盛岡支場 栽培生理研究室
- 連絡先:01961031
- 部会名:野菜・茶業
- 専門:生理
- 対象:果菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
イチゴの促成栽培において、花芽分化を促進するため暗黒低温処理をすると、新葉は著しく黄化するとともに徒長する。このため、葉は軟弱で折れやすく、苗の運搬及び定植等の作業を困難にしているだけでなく、定植後の生育遅延などの影響を及ぼすものと考えられる。そのため、暗黒低温処理は比較的廉価で省力的な方法であるにもかかわらず、普及が遅れている。そこで、新葉の徒長防止技術の確立が急務となっている。
成果の内容・特徴
- 15日間の暗黒低温処理中に出葉した新葉の葉柄長は、暗黒の場合には著しく徒長するが、赤色光及び白色光照射では自然光(85%遮光)下と変わらず、新葉の黄化も減少する(図1)。また、暗黒低温処理を継続すれば、その後に出た新葉の葉柄長の差は拡大する(表1)。
- 赤色光以外の白色光に含まれる青色光(400~500nm)及び緑色光(500~600nm)の単色光を照射した場合には徒長・黄化防止効果が認められず、白色光の徒長防止効果は白色光に含まれる赤色光によるものと判断される(図2)。
- 頂花房の花芽分化株率には差はないが、出蕾・開花日は赤色光照射により暗黒区と比べそれぞれ2.5日及び3.5日早い。開花数・花数及び果重を見ると赤色光で最も多く、腋花房の出現株率は赤色光で明らかに高い(図3)。
- 赤色光照射による葉柄の徒長抑制は表皮細胞の伸長抑制の結果である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 赤色光下では、葉柄は屈光性を示さないので、真上からだけでなく、積み上げたコンテナの横方向からの照射によっても同様の効果が期待できる。
- ナバナ等の種子の低温処理中における徒長防止にも有効であることを確認したので、他の作物にも応用できる可能性がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:寒・高冷地における野菜の生態的反応の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成6年度(平成4~8年)
- 研究担当者:宍戸良洋・熊倉裕史・浜本 浩-->
- 発表論文等:イチゴの暗黒低温処理における赤色光照射が葉柄の生育に及ぼす影響.
園学雑,63(別1),1995(投稿中).