床土増量方式による葉菜類のセル苗生産
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要約
セル苗生産において少量の床土(培養土)に寒冷紗を敷き、その上に培養土を詰めたセルトレイを載せる床土増量方式を開発した。この方式は葉菜類の初期生育を増進させることができる。
- 担当:野菜・茶業試験場 施設生産部 栽培システム研究室
- 連絡先:0569-72-1166
- 部会名:野菜・茶業
- 専門:栽培
- 対象:葉菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
近年、セルトレイを用いた高密度苗生産が導入されたにもかかわらず、生産者はさらに高密度の苗生産、育苗期間の短縮、または大苗定植による本ぽ期間の短縮、定植後の生育むらの軽減などを切望している。また、苗輸送や機械定植への適応性を考慮すればセル容量は小さいほうが望ましい。しかし、セル容量の小さいトレイでは苗数が多く、育苗期間も短縮できるが、根圏縮小による根の老化、茎葉生長の抑制、小苗定植による生育むらの増大などの問題点も共存する。そこで、上述の特性を保持しながら初期生育を増進させる高密度良苗生産手法を開発する。
成果の内容・特徴
開発した床土増量方式は図1の ごとく少量の床土に寒冷紗を敷き、その上に培養土を詰めたセルトレイを載せるだけである。慣行と同じ育苗管理を行い、定植の約2日前に寒冷紗からセルトレ イを引き離すことによって床土と寒冷紗に伸びた根を切断する。根切断によって根圏が縮小するが、葉菜類の多くはセルトレイ内の根から支根が発生するので、 定植後の生育遅延はほとんど認められない。 この床土増量方式の特徴は次のとおりである。
- 増量した床土から養水分を吸収して初期生育が増進すること、潅水むらや肥料むらが少なく整一な生育を示すことから比較的均質な大苗となる。定植後の生育遅延もほとんど認められない(表1~3)。
- セルトレイを寒冷紗から引き離すと培養土量は慣行とほぼ同じとなり、輸送や定植作業は慣行に準じたシステムを組むことができる。
- 初期生育の増進効果はキャベツ、ブロッコリー、ネギの他にトマトやトルコギキョ ウ、ニチニチソウなどにおいても認められる。
成果の活用面・留意点
- 本方式は育苗期間を短縮する短期苗生産やセル容量の小さいセルトレイ(栽植本数が多い)を使用する高密度苗生産にも利用できる。
- 潅水回数や施肥回数を少なくすることができるので、育苗の軽作業化に役立つ。
- 支根の発生が遅い葉菜類は寒冷紗からセルトレイを早めに引き離す。
- 育苗期間を長くするほど大苗となるが、定植時に地上部が倒伏しやすくなる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:生育制御技術のシステム化
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成6年度(平成2~5年)
- 発表論文等:(1)葉ネギのセル成型苗の生育に及ぼす土量の影響.園学雑,62(別1),
224-225,1993
(2)トマトの高密度苗生産システムの開発.園学雑,63(別1),294-295,
1994