ブロッコリ-べと病菌の分散媒使用による長期凍結保存法

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要約

人工培養できないブロッコリ-べと病菌の長期保存法を確立した。ブロッコリ-葉で増殖した分生胞子を10%dimethyl sulfoxide(DMSO)と5~10%スキムミルクを添加した水溶液で懸濁し、-20°Cで1日予備凍結後、-80°Cに移して保存する。

  • 担当:野菜・茶業試験場 環境部 病害第1研究室
  • 連絡先:0592-68-4641
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:作物病害
  • 対象:花菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

純寄生菌のブロッコリ-べと病菌(Peronospora parasitica)の保存は、従来宿主の植物体を用いる継代培養に頼ってきた。この方法は継代の作業が煩雑であり、菌株間の相互汚染も懸念される。本菌の発生生態や系統分化等の研究を効率的に推進するためには、分生胞子による安定した長期保存法の確立が必要である。そこで、凍結保存時の傷害を防止する分散媒を用い、べと病菌の分生胞子の-80°Cにおける安定な長期保存法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 凍結による傷害から分生胞子を保護する最も有効な分散媒は、分生胞子の発芽率からみてDMSOである。スキムミルクも保護効果が認められる(表1)。
  • 分生胞子の発芽率は、-80°Cの凍結処理によって著しく低下するが、-20°Cで1日予備凍結後、試料を-80°Cに移動することにより、発芽率は-20°Cの凍結 処理と同程度に向上する。
  • 複数添加の保護効果を比較するため、5%DMSOにそれぞれ5%スキムミルク、5%ブドウ糖或は1%グルタミン酸ナトリウムを添加した分生胞子懸濁液を -20°Cに保存すると、DMSOとスキムミルク添加で分生胞子の発芽率は最も高く維持されるが、保存3か月後には発芽力を失う。
  • 10%DMSOと5~10%スキムミルクの混合水溶液で懸濁した分生胞子を-20°Cで1日間予備凍結後-80°Cで保存すると、分生胞子は1年後でも保存直後と同程度の高い発芽率を維持し、ブロッコリ-子葉に対して強い病原性が認められる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 凍結融解の繰り返しが病原性に及ぼす影響は未確認のため、試料は少量ずつ多数のチュ-ブに分注して保存し、融解した試料は再保存しない。
  • キャベツ、ダイコン及びハクサイべと病菌も同様の方法で保存可能である。
  • アブラナ科以外のべと病菌にも適用できる可能性がある。

具体的データ

表1 凍結処理時の分生胞子に及ぼす分散媒の保護効果

表2 -80°Cで凍結保存した分生胞子の発芽率及び病原性

その他

  • 研究課題名:ブロッコリ-べと病菌の凍結保存
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成3~4年)
  • 発表論文等:Preservation of conidia of broccoli downy mildew fungus with
    cryogenic protectants by freezing at -80°C. 日植病報, 59巻5号,
    492-499, 1993.