イチゴ炭そ病菌及びシクラメン炭そ病菌の病原力及び宿主感受性の簡易検定法
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要約
切断葉裏にイチゴ炭そ病菌及びシクラメン炭そ病菌株の胞子懸濁液を滴下し病原力と宿主感受性を病斑形成と病斑面積で検定する方法を確立した。
- 担当:野菜・茶業試験場 久留米支場 病害研究室
- 連絡先:0942-43-8271
- 部会名:野菜・茶業
総合農業(生産環境)
九州(病害虫)
- 専門:作物病害
- 対象:果菜類
- 担当: 花き類
- 分類:研究
背景とねらい
最近、イチゴやシクラメン炭そ病の被害がとくに顕在化してきた。その理由として両病原菌は相互の宿主を侵し、さらに病原菌自身の寄主範囲も広いことが考えられる。そこで、これらの病原菌の病原力や宿主の感受性を無傷接種にて簡単に検定する方法について検討する。
成果の内容・特徴
- イチゴ品種と系統は久留米支場育種2研が育成中の3系統を含む4種類および市販シクラメン2品種を用い、また、病原菌はイチゴ炭そ病菌 (Colletotrichum gloeosporioidesとC. acutatum)をそれぞれ8菌株と2菌株を、シクラメン炭そ病菌(C. gloeosporioidesとC.acutatum)は各1菌株を用いて、以下の方法で検定した。
- 検定方法は(1)各菌株をジャガイモ液体培地で振とう培養してろ過した後、10^6個/mlの胞子懸濁液を調整する。(2)それらの胞子懸濁液は湿度を 保ったプラスチック箱内に並べたイチゴやシクラメン葉裏にパスツールピペットで滴下する。(3)滴下液中の胞子が沈むのを見計らい湿度を維持するため殺菌した薬剤検定用濾紙(8mm)をおく(4)これらの葉の上をティッシュペパーで覆い、殺菌水を噴霧し、箱を密封して24°Cに2日間、28°Cに5-8日間 保存した。(5)処理後7-10日後に取出し、病斑形成の有無、病斑面積について検定する。
- 本法では各病原菌の病原力を病斑面積によって、また、宿主の感受性は病斑形成の有無によって類別できる。
- 炭そ病菌のうち、イチゴ炭そ病菌株には感受性の強弱を明瞭に反映する菌や病原性を消失した菌株等が識別できる(表1)。また、シクラメン炭そ病菌株にはイチゴ炭そ病に強い品種・系統を侵すが、シクラメンに対しては明瞭な感受性の差異を示す菌株も存在する(表1,2)。
- イチゴ及びシクラメンの葉齢は病斑形成を左右し、概して下位2-3葉の方が上位2-3葉よりも病斑が小さいか、形成が抑制される(表2,3)ので、検定には上位葉を用いる。
成果の活用面・留意点
- イチゴおよびシクラメン炭そ病菌は相互の宿主を侵すので、それぞれの作物の感受 性検定には1作物の菌株だけでなく、他作物の菌株も加えた複数菌株を用いる。
- 検定する葉の葉齢を揃える。
- 切断葉の切断面から腐敗するので流動パラフィン等で覆う。
具体的なデータ



その他
- 研究課題名:イチゴに発生する病害の発生生態と被害機構の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間 :平成6年度(平成元~10年)
- 発表論文等:シクラメン炭そ病に対する品種間差異、病原菌の諸性質、感染と伝搬、
ならびに薬剤感受性.九病虫研会報,40,75-81,1994