スイカのSTS処理による多雌花性の早期選抜法
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要約
スイカの子葉展開期に3~6mMのSTS(チオ硫酸銀)を散布すると多雌花性系統ほど第1雌花着生節位が低くなる。この性質を利用すると定植期(5~6葉期)までに実生集団から多雌花性系統を効率よく選抜することが可能である。
- 担当:野菜・茶業試験場 久留米支場 育種第1研究室
- 連絡先:0942-43-8271
- 部会名:野菜・茶業
- 専門:育種
- 対象:果菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
スイカはメロン・キュウリ等のウリ科野菜に比べて雌花の着生が著しく少なく、しかも温度、日長、肥料等の環境条件で雌花の着生が左右され易い。このためスイカ栽培では肥培管理に神経を使い、交配作業に多くの時間を要している。それゆえ雌花着生能の安定して高い多雌花性スイカの育成が必要になっているが、多雌花性の評価は生長後期まで調査を継続しなければならない難点がある。そこで生長調節剤利用による簡易な多雌花性の早期選抜法の開発を計画した。
成果の内容・特徴
- 子葉展開期に3~6mMのSTS(チオ硫酸銀)を葉面散布(約2ml/株)することにより、第1雌花着生節位が無処理よりも平均約2節低下し、低い系統では4節位以下から雌花が着生した(表1)。雌花着生数の多い品種ほどSTS処理によって第1雌花着生節位が低くなる傾向が認められた。
- 雌花数の多い品種と少ない品種の交雑F2集団においても、STS処理で第1雌花着生節位の低い個体ほど雌花着生数の多い傾向がある(図1)。
- STS処理されたF2集団から第1雌花着生節位の低い個体(RG94)と高い個体(RG33)を選抜して、F3世代における雌花数を調査したところ,第1雌花着生節位の低い個体の後代は高い個体の後代よりも雌花数が多く、選抜効果が認められる(図2)。
- 以上の結果から、子葉期にSTSを処理することによって定植適期の5~6葉期までに多雌花性系統を得ることが可能である。
成果の活用面・留意点
- スイカの多雌花性の簡易な早期選抜法として育種に活用できる。
- 処理濃度が高い場合(6mM以上)及び葉齢の高い苗(2葉期以上)での処理では効果が低く、薬害がでることがあるので注意する。特に、高温時には注意が必要である。
- 雌花の着生は温度・日長に影響され易く季節変動があるので、対照品種を入れる。
- STS剤はスイカには未登録であるため,一般には使用できないので注意する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:スイカ着果安定性系統の育成
- 予算区分 :経 常
- 研究期間 :平成6年度(平成2~12年)
- 発表論文等:スイカにおけるSTSとエセフォン処理による雌花着生性の早期検定.
育雑,43(別2),1993