チャの窒素吸収・分配の季節リズムと一番茶新芽窒素の由来の解明

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要約

チャの窒素吸収能は春期と秋期に高く、夏期と冬期に低下する。春~秋の吸収窒素は葉に分配され、冬期吸収窒素は根に分配される。夏以前に吸収された窒素の一番茶新芽窒素への寄与率は低く、秋以降徐々に高まり、早春に最高となる。

  • 担当:野菜・茶業試験場 茶栽培部 栽培生理研究室
  • 連絡先:0547-45-4101
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:生理
  • 対象:茶
  • 分類:研究

背景・ねらい

合理的かつ効率的な施肥法開発のためには、チャがいつ窒素を必要とし、新芽を構成する窒素がいつ吸収されるかを知る必要がある。そこで重窒素(15N)標識の培養液で水耕栽培した幼茶樹を用いて、1)窒素吸収活性の季節変動、2)吸収窒素の一次分配及びその後の挙動、3)生育各時期に吸収された窒素の一番茶新芽窒素への貢献度等を調査し、チャの窒素吸収・利用に関わる基本特性を解明する。

成果の内容・特徴

  • 一番茶新芽窒素に占める新規吸収窒素(萌芽後に吸収された窒素)の割合は約30%であり、残りの70%は葉や根からの再転流窒素に由来する(表1)。
  • 季節別にみたチャの窒素吸収能力は春期に高く、夏期にやや低下し、秋期に再び高まる。また、冬期にも比較的多量の窒素が吸収される(図1)。
  • 新芽の生長期に吸収された窒素は新芽に多く分配されるが、生長停止期に吸収された窒素は根に多く分配される(図2)。葉に移行した窒素の多くはそのまま葉に留まるが、根に蓄積された窒素の多くは一番茶新芽に再転流する。
  • 月別吸収窒素の一番茶新芽窒素への寄与率は、春から夏の各月は数%以下と低いが、秋以降は徐々に高まり、早春の2月~4月に最高となり、この3ヶ月の寄与率の合計は約60%に達する(表2)。

成果の活用面・留意点

  • ここで得られた窒素の吸収・分配の季節リズムや新芽への寄与率に関するデータは、基本的に成木へも適用可能と思われる。但し、貯蔵養分を多量に有する成木では、一番茶新芽窒素に対する樹体内貯蔵窒素の寄与率は幼木よりさらに高いと予想される。
  • 冬期の比較的多量の窒素吸収は、好適環境(ガラス室、水耕)下に置かれた場合、新芽生長停止期においてもチャは高い窒素吸収能を発揮することを示している。しかし、その生理的意義や圃場条件下における冬期の窒素吸収に関しては、さらに検討が必要である。

具体的データ

表1 一番茶期における幼茶樹各部位の窒素収支

表2 一番茶新芽窒素に対する月別吸収窒素の寄与率

図1 月別のN吸収量及び存在比の推移

図2 月別に吸収されたNの一次分配

その他

  • 研究課題名:茶樹の季節的窒素吸収と一次及び二次分配
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成4~6年)
  • 発表論文等:Remobilization of Nitrogen from Vegetative Parts to Sprouting Shoots of
    Young Tea (Camellia sinensis L.) Plants.Jpn.J.Crop Sci.,63,125-130,1994